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第68話
俺の疑問はその後も胸の中でもやもやと引っかかり続けた。部屋に戻ってデッキのソファで彼を膝枕しているときも、銚子で一杯やりながら風呂に入ってるときも、ずっとあの慰霊碑が頭から離れなかった。
「ハニー、オンセンに入りながら酒を飲むっていうのは贅沢だな。本当に気持ちがいい」
最近日本酒も覚えた彼は、露天風呂で一杯やるスタイルにすっかりハマったらしい。岩風呂に体を預けてすっかりご満悦だった。
「温泉の醍醐味だよ。これは銭湯じゃできねぇからな」
「そうなのか、セントーとオンセンには色々なルールがあるんだな」
「ルールってくらい厳密なもんじゃないけどな」
岩風呂で肌が傷つくなんて彼が言ってたけど、それこそ岩風呂で誰か足滑らせて死んだとか、それで慰霊碑立ってるとか……。
考え出したら何にでも関連づけられそうで、なんだか具合が悪くなってくる。
「どうしたんだハニー、日本酒は美味くないか?」
彼がキョトンとして見つめてくる。
「ん、あ、いや、そういうわけじゃないけど」
「のぼせたんじゃないか?」
心配してくれるけど、のぼせるほど熱いお湯でもない。
「大丈夫。ちょっと気になったことがあってさ」
適当に微笑んで流そうとするが、こういう時の彼は察しがいい。
「もしかして、さっきの変な石のことか?」
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