72 / 148
第72話
「うーん、なんか絵本みたいなのにした」
それだけを伝えると、たまには絵本もいいじゃないかと笑われた。
「寝る前に読み聞かせてくれよ」
「余計眠れなくなるぞ、なんかチャンバラみたいな本だから」
「チャンバラ? サムライのあれか?」
「そうそう」
「ワァオ、それは眠れなくなっちまうな」
眠れないだけならまだしも、彼の場合はそのまま夜の営みに発展するだろう。
彼は立ち上がると、俺の手を取ってデッキに向かった。
「夜に聞いたら眠れなくなりそうなら、昼寝なら大丈夫だろ?」
言いながら腰掛けたのはソファー。そのままの流れで膝枕される。
「お前、これやりたかっただけだろ?」
尋ねると、俺の膝の上で彼は微笑む。両方のほっぺたをつまんでムニムニと引っ張ると、余計にとろけるように笑った。
「はは、バレちまったか」
「バレバレだっつうの」
「でも嫌じゃないよな?」
「そりゃ嫌じゃないよ」
この空間でこのポジショニングが当たり前になってきていた。
「さ、物語を読んでくれハニー」
手をお腹の上に組んで催促してくる。
「読んでもいいけど、読めるかわかんねぇよ」
それは中身が旧字体と文語体のオンパレードの本だから。
ともだちにシェアしよう!