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第72話

「うーん、なんか絵本みたいなのにした」 それだけを伝えると、たまには絵本もいいじゃないかと笑われた。 「寝る前に読み聞かせてくれよ」 「余計眠れなくなるぞ、なんかチャンバラみたいな本だから」 「チャンバラ? サムライのあれか?」 「そうそう」 「ワァオ、それは眠れなくなっちまうな」 眠れないだけならまだしも、彼の場合はそのまま夜の営みに発展するだろう。 彼は立ち上がると、俺の手を取ってデッキに向かった。 「夜に聞いたら眠れなくなりそうなら、昼寝なら大丈夫だろ?」 言いながら腰掛けたのはソファー。そのままの流れで膝枕される。 「お前、これやりたかっただけだろ?」 尋ねると、俺の膝の上で彼は微笑む。両方のほっぺたをつまんでムニムニと引っ張ると、余計にとろけるように笑った。 「はは、バレちまったか」 「バレバレだっつうの」 「でも嫌じゃないよな?」 「そりゃ嫌じゃないよ」 この空間でこのポジショニングが当たり前になってきていた。 「さ、物語を読んでくれハニー」 手をお腹の上に組んで催促してくる。 「読んでもいいけど、読めるかわかんねぇよ」 それは中身が旧字体と文語体のオンパレードの本だから。

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