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第73話
とりあえず読んでやろうかと思って本を開くけど、速攻旧字体で活版印刷で字が細かくてすぐに閉じた。やっぱり、俺が読む本じゃない。
「どうしたハニー、諦めたか?」
「あぁ、諦めた。古すぎて字が読めない。ダメだ」
「古すぎるとはどういうことだ?」
「日本は歴史が古いからいろんな字があるんだよ」
「ほう、なんだかわからんが。もし読めなかったら、ハニーの好きな話でもしてくれ」
「好きな話?」
とっさに出てこない。桃太郎とか浦島太郎とかそういう話でもしたらいいのか?
仕方がないから本を傍らに置いて、彼の頬を撫でながら、他愛のない話をした。
「ほら、後輩いたじゃん」
「ああ、彼がどうしたんだ?」
「この間そのカノジョとたまたま会ってさ、一緒に酒飲んだんだけど、すげぇいい子なんだよ。あいつにもったいない感じの。あ、カノジョって言っても男なんだけど」
「なんだ、俺たちと一緒だな」
「まぁな。男同士で大丈夫なのかな。まだ若いし、いろいろあるんだろうしさ」
「性別なんか関係ないさ。愛する人と出会えること、それが重要なんだ。俺とハニーみたいにな」
「うーん、そっか……そうだよな」
「見守ってやればいい。助けを必要とした時に、きちんと助けてやれるように」
「……そうだな」
引き寄せられるみたいに出会った俺たちにみたいに、奴らも運命みたいなものを感じることがあるのかな。
そうしているうちに、彼はまた、俺の膝の上で眠ってしまったのだった。
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