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第77話

石の謎もわからないまま、本棚の本の謎まで追加されて、結局何の正体もわからないまま、俺の頭も混乱したままだった。 もうあと3日ほどで帰るけど、謎は解決されるのだろうか。キナ臭いまま過ごしてはいるけど、女将の態度は特におかしなところもないし、料理も美味しいし、温泉も心地いい。 「そういえば女将が言っていたが、そこの山も遊歩道になっているそうだぞ。明日行ってみないか?」 部屋での夕食後、ワインを嗜みながら、彼がデッキの向こう側を指差した。そこの山と言われても、山ばかりでどこの山かわからない。 「まぁ、天気良かったらな」 ぼんやりした頭で適当に流すような返事をすると、彼が心配した顔をする。 「おいハニー、大丈夫か? あの石を見てから、ずっと様子がおかしいぞ」 まったくもってその通りで、俺はあの石を見てからなんだか調子がおかしい。霊感なんかないし、オカルトなんかも別に興味ない。なのに、なんだかやたらあの石が気になって仕方がない。そんな自分のことも気持ちが悪い。 「そこまで気になるなら、そろそろ答え合わせをしたらどうだ? せっかくの新婚旅行で、悩み事を増やす必要はないさ」 俺に言った直後彼が呼び止めたのは、板前たちと夕食の片付けをする女将だった。 「オカミ、俺の妻の悩みを聞いてやってくれないか?」 「どうかなさいましたか? お料理がお気に召しませんでしたでしょうか?」 女将は少し恐縮した様子で、俺と彼を交互に見ながら尋ねてきた。

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