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第79話

詳しい話をしてくれるというので、お願いすることにした。せっかちな彼が「どうしても今日のうちに知りたい!」とごねたため、それなら夕食の片付けをしてから、改めて女将が後で部屋に来てくれることになった。 「ったく、女将にも迷惑だろ、明日でもよかったのに」 彼に恨み言を言う。そこまで大掛かりな話になるとは思わず、さっきの女将の言葉とは裏腹に、何かまずいものでも見てしまったのではないかと思った。 とはいえ事の真相がわかることに、ほっとする気持ちも強かった。 「なんだかドキドキするな」 大して興味もなさそうだった彼ですら、そんなことを言っている。 「うん、なんかな」 俺もちょっと落ち着かない。 食事が片付いてから30分ほどして、女将が部屋を訪ねて来た。 「失礼いたします」 女将の様子は変わりない。手には厚い風呂敷包みを持っていた。 「あ、どうぞ」 前室の橋のところで出迎える。さっきまで飯を食ってた囲炉裏の部屋で話を聞くことにした。 囲炉裏の横の座卓に並んで座る俺と彼、その正面に女将というポジション。なんとなくお茶を用意して待っていると、女将が驚いた顔をした。 「あら、お客様にお茶をご用意いただくなんて、大変申し訳ありません! 」 こっちの緊張感と対照的に、慌てぶりがあまりにも普通で全然緊張感がなくて、すっと肩の荷が降りた気がした。

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