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第93話

なぜか息を飲んでしまう。骨董品の値段を聞くような気分で。 「しめて、今の価値にして、一晩で50万円と言われております」 「50万っ?」 声が裏返った。 「当時、普通の陰間を1日買ったとしても10万円程と言われていたそうですので、破格であったのは言うまでもありません。それをほとんど日をおかず毎日通いつめていたというのですから、よほど裕福であったのでしょう。相手の方は年齢は30代半ばほどだったそうで、その若さでポンポンとお金を出せるのはすごいことですよね」 「ふぅん、年は俺より若いが、羽振りの良さは俺と同じだな」 彼が軽く頷くが、それが本当に裕福なもんだからツッコむこともできない。 「たしかにそんだけ裕福で、プレゼントまでくれるんじゃ、好きにもなりますよね」 しかも籠の鳥みたいな生き方をしているんだから、なおさらのこと。 「左様でございますね。お相手の貿易商の男性も彼を深く愛したそうで、彼を身請けすることにしたのだそうでございます」 「ミウケ?」 首をかしげる彼に、耳打ちするみたいに解説を入れる。 「貰っていくってことだよ。店から買うっていうか」 「連れ帰るということか?」 「うん、そういうこと」

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