93 / 148
第93話
なぜか息を飲んでしまう。骨董品の値段を聞くような気分で。
「しめて、今の価値にして、一晩で50万円と言われております」
「50万っ?」
声が裏返った。
「当時、普通の陰間を1日買ったとしても10万円程と言われていたそうですので、破格であったのは言うまでもありません。それをほとんど日をおかず毎日通いつめていたというのですから、よほど裕福であったのでしょう。相手の方は年齢は30代半ばほどだったそうで、その若さでポンポンとお金を出せるのはすごいことですよね」
「ふぅん、年は俺より若いが、羽振りの良さは俺と同じだな」
彼が軽く頷くが、それが本当に裕福なもんだからツッコむこともできない。
「たしかにそんだけ裕福で、プレゼントまでくれるんじゃ、好きにもなりますよね」
しかも籠の鳥みたいな生き方をしているんだから、なおさらのこと。
「左様でございますね。お相手の貿易商の男性も彼を深く愛したそうで、彼を身請けすることにしたのだそうでございます」
「ミウケ?」
首をかしげる彼に、耳打ちするみたいに解説を入れる。
「貰っていくってことだよ。店から買うっていうか」
「連れ帰るということか?」
「うん、そういうこと」
ともだちにシェアしよう!