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第94話

「囚われるように想い続けていた同級生への想いも少しずつ解かれて、身請けの話が出る頃には、彼は心から貿易商の男性を愛するようになったそうでございます。店主も身請けを容認し、誰もが2人を祝福したそうでございます」 女将がまた一口お茶を飲んだ。 俺もすっかり話に聞き入ってしまって、その仕草すらもどかしく感じるほどだった。 「そんなときでございました。彼が茶屋で働いていることを知った例の同級生が、彼を訪ねてきたのです」 そしてまたも急展開。 「身請けされる数週間前のことだったそうございます」 「えっ、ヤバいじゃないですか」 身を乗り出しながら顔をしかめる。彼も眉間に皺を寄せていた。 「えぇ。実は同級生の方も陰間の彼のことをずっと好きでいて、探し続けていたのだそうです」 「えぇ……超複雑じゃん……」 想像以上に複雑な人間関係が展開されている。 「当時、2人は17、8歳。同級生の方は大学へ進学する予定が立っていたのだそうです。彼と過ごした学校を卒業し進学する合間に、茶屋を訪ねて来たそうで」 春休みに出掛けてきて偶然出会ったとかそんな感じだろうか。 「彼がこの茶屋で陰間をしているという情報を仕入れ、わざわざ訪ねて来たとか」 ここでも期待を裏切られた。

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