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第97話
「しかしその後も、その後も、貿易商の方と変わりない頻度で、同級生の方は彼の元を訪れたそうでございます」
「えっ?」
だって借金して来たんじゃなかったっけ?
「初めて彼と逢瀬を重ねた同級生の方は、箍が外れたように彼の元へ通い詰めたそうです。あと数週間で身請けされるとなれば、もう会うことは叶いませんから」
「だからって、金が……」
聞いててハラハラした。もう死んだ人の話だから、我ながら白熱することもないんだけど。
「せっかく再会できた愛しい彼に会いたくてお金を工面したそうです。が、結局は借金。その通りの高額の陰間ですから、あっと言う間に借金は増え、破産寸前に追い込まれたのだそうです」
足元から崩れて行くような不安を覚える。なんとなく手繰るように彼に触れると、察したみたいに抱き寄せられる。
「まだ学生なのに、そんなに借金を背負って大丈夫なのか?」
彼まで不安そうに尋ねる。
「大丈夫ではありませんでした。もう彼が払いきれる額ではありませんでした」
女将の口調も重苦しい。
「陰間の彼もそれを察して、自らの借金として上乗せを願い出たりもしたそうなのですが、身請けの決まった身でそれは叶いません。彼自身も、かつての初恋の人を、再び愛してしまったのです」
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