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第98話

なんとなくそうかもなと思っていたけど、やっぱそういうシチュエーションだと好きになっちゃうよな。 「しかし、彼らの恋が許されるわけはありませんでした。長いこと彼を独占していたことで、貿易商の方はしばらく彼に会うことが出来ず、痺れを切らしたある日、倍額の60万円で彼を買ったのだそうです」 「うわ、マジですか」 今も昔も、羽振りのいい奴っているもんだな。 「そこで全ての事情を知った貿易商の方は、彼を身請けする日を数日早められました。その間も、同級生の方が払えないであろう倍の額を支払い続け、彼に会わせないようにしたのです」 気持ちはわかる。そうやって引き離したほうが効率的だろうし。 「もちろん、2人はもう会えませんでした。ただでさえ借金をしたのに、さらに倍の金額を工面できるわけもありません。陰間の彼の方も恋心がくすぶっていたようですが、自分の立場をわきまえ、一時の気の迷いと言い聞かせたようです。店主も相当諭したようで」 「でしょうねぇ」 結婚前に独身最後ハメ外しみたいなもんだろうか。どっちにしろ、昔から好きあってた2人が結ばれることはなかったということか。 「しかし、それで一件落着かと思われたのですが、事態は思わぬ方向へ向かっていきました」

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