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第99話

続きが気になって仕方がない言い方をする。 「身請けの数日前のことだったそうでございます。再び同級生の方が店に現れたそうでございます。最後に、本当に最後に一度だけ、姿を見たかったと言って訪ねて来たそうですが、そのまま陰間の彼と駆け落ちを試みたそうなのです」 「駆け落ちっ?」 ずいぶん大胆なことするんだな。それくらいお互いに好きになってたってことか。 「え、成功したんですかそれは?」 「いいえ、店を出ることも叶わず、すぐに引き離されたそうです。同級生の方は折檻され、陰間の彼は部屋から一歩も出さないように見張られたと。その出来事は、貿易商の方の耳にも入りました」 「oh……。最悪じゃないか」 彼が息を飲む。2人して、映画でも見ているように聞き入っていた。 「それから身請けまでの数日は何事も起こらなかったそうですが、本当の悲劇はこれから起こりました」 女将がお茶を飲む。俺もなんだか喉が乾いて、淹れていたお茶を一口飲んだ。 「で、その悲劇っていうのは」 つい急かしてしまう。 「はい。陰間の彼が店から貿易商の方に引き渡されて、当時珍しかった車に乗り、お屋敷に向かう途中だったそうです」 「途中で?」 「途中で、折檻されボロボロになった同級生の方が車のそばに現れたのです」

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