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第100話
「うわ」
想像するとホラーだった。
「顔中痣だらけで腫れ上がっていて、着ていた着物も端切れのようで、一瞥しただけでは本人とは思えないほどの姿だったそうです」
頭の中にはもうゾンビしか思い浮かばない。
「本当に最後に一目だけ、陰間の彼の姿を見たかったのだそうですが、いわば恋のライバルとも言うべき貿易商の方とはそのとき初めて対峙した形だったと」
想像してみたけど、極めてよろしくないシチュエーションのような気がする。けど映画とかドラマで見るようなシーンにも感じる。でもかたやゾンビか……。
女将は俺たちを改めて見ると、まるで奥様方が怪しい世間話するみたいに声を潜めた。
「しかしですね、ここでその貿易商の方が、突然陰間の方を、そこで車から降ろしたのだそうです」
「ええっ、嘘でしょ?」
予想外の展開で、こっちまで奥様のようにリアクションをとってしまう。
「それが本当なのでございます。彼を同級生の方にそのまま譲ったのだそうです」
「何故そんなことをっ?」
彼が目をまん丸くしている。
「その真意は書かれてはおりませんでした。しかし、その貿易商の方は後に商家の女性とご結婚されたようですので、もともと連れ帰る予定ではなかったのかもしれません」
「じゃあ、一体何のために彼を手に入れたんだ?」
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