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第101話
食い気味に彼が尋ねる。
「もしかして、もともとその同級生の人に彼を譲るために、身請けしたとかですか?」
恐る恐る尋ねてみると、女将は軽く首を傾げた。
「もしかしたらそうなのかもしれません。はっきりとしたことは、何も情報が残っておりません」
ここまで聞いておいて、そこだけ濁されてしまうのは本当に具合が悪い。そうだろうって信じたほうが全然スッキリする。
「うー、モヤモヤするぅ」
俺が体を捩ると、彼は俺の頬に自分の頬をくっつけてきて、女将に尋ねた。
「それで、2人はどうなったんだ?」
囁くように、ちょっと不安そうに。すると女将の表情はぐっと曇ってしまった。
「そうですね、2人の行く末こそが、あの慰霊碑が存在する理由です」
「それは、どういう」
彼が息を飲むのに合わせたように、女将が改めてお茶を一口飲んだ。そのまま飲みきってしまう。
「誠に申し上げにくいことです」
一息つくように、ため息を吐く。
「その後のお2人に関する情報は断片的なものでございますが、どうやらお2人で山間の掘っ建て小屋のような家に暮らし始めたようなのです」
「へぇ、それなら良かったんじゃないんですか?」
念願の2人の生活だろうに。けれど、慰霊碑に繋がっているというのだから、良い方向ではないのだろう。なんだか背筋が寒くなってきた。
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