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第102話
「少しの間は良かったようですが、お金も仕事もない2人が長く暮らすことは難しいことだったようで、次に記録としてお2人が登場するのは数年後、陰間の彼が亡くなったという、あまりにも悲しい知らせでございました」
「えっ」
何となく想像してはいたものの、急展開に流石に息を飲んだ。
「原因ははっきりとはしておりませんが、そうした話が茶屋に伝聞されてきたのだそうです。随分やせ細っていたとのことでしたので、栄養失調や病気などなのかもしれません」
なんかバッドエンドの映画を見ているような気分だった。
「同級生の方も、時折彼の家族が様子を見ていたものの、ずっとそのお家で暮らし続けていたようです。2人で過ごした時間を慈しむように、ずっと」
女将が軽く鼻をすすり、目元を拭う。
「その後のお2人に関する記述はございません」
再び軽く息を吐いた。
「陰間の彼が亡くなったという知らせを聞いた店主は、即座に中庭に慰霊碑を作らせたのでそうでございます。それは、彼が店にとって偉大な存在であったから、そしてあまりにも悲劇の人生を歩んできたから。お客様にもそれを知らせたかったから。店主が出来る、最後の餞であったのだと思います」
「oh my god……」
彼が、いつになく声を詰まらせた。
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