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第103話

部屋の中が重い空気に包まれる。 遠くでなんかの鳥の鳴き声がするけど、ずっと鳴いててくれないかなと思うくらい静かで、緊張感が漂っていた。 女将と彼は軽く下を俯いて、息すら留めてるんじゃないかと思うくらい沈黙している。 「なんてつらい話なんだ……。2人はせっかく結ばれたのに、すぐに離れ離れになってしまったも同然じゃないか」 「全くです。それがあの慰霊碑の歴史であり、正体なのでございます」 (うーん、なるほどなぁ) 驚きはしたものの、正体がわかったことでスッキリした俺とは対称的だった。 彼にぬいぐるみみたいに抱かれたまま、2人の様子をチラチラと交互に見る。 彼らのことはもちろん可哀想だと思う。 結局何歳で死んだんだかわかんないけど、若くして死んだことには間違いないわけだし。 まだまだやりたいこともあったんだろうと思う。 けれど、俺は2人みたいに、会ったこともない昔の人の死を悼むほど優しくはない。 (結局曰く付きの宿ってことか……) そういうことよりも、そっち方面のことが気になって仕方がなかった。 ここで人が死んだわけじゃないみたいだけど、それでも死んだ人を強く想って造られたものが、中庭という宿のど真ん中に存在してるっていう時点でだいぶ気味が悪い。

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