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第106話

「彼らは辛かっただろうな。ずっとお互いに好きだったのに、気づかずに別れて、やっと出会えてやっと一緒になれたのに、また離れ離れになってしまったんだから」 顔を上げた彼に、そのまま抱きしめられる。 「もしお前が俺を置いて逝ってしまったらと思ったら……俺は……俺はっ」 そのまま俺の肩口に顔を埋めて、背中を震わせて泣き始めた。 「おいっ、ちょっと……っ」 びっくりした。びっくりしたけれど、彼が思っていることも理解できる。心がぎゅうっと絞られるみたいに痛んだ。 とにかく、彼を落ち着かせないと。 「……勝手に殺すなバカ」 極力背中を優しく撫でるように努める。彼は泣き止まなくて、大きな図体を小刻みに震わせていた。 「ほら、落ち着けって。なぁ」 本当にしょうがねぇなぁ。ガキ慰めてるみたいだ。 けれど、本気で泣いている彼はなかなか泣き止んではくれない。大の男がこんなに大泣きするなんて、今まで直面したこともなかった。 無理やり体を離す。驚いたような怯えたような顔をしてたけど、そのほっぺたを両手で包んで真っ直ぐに俺の方を向かせた。 「ちゃんと見ろ。ほら、俺いるだろここに」 じっと目を見つめながら、諭すみたいに言う。

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