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第108話

「だって俺、お前の妻なわけじゃん」 胸の中におさまるみたいに抱きつく。 「だから、弱味とか辛い気持ちとか、全部言ってくれていいんだよ」 背中に手を回すとすっかり密着して、彼の心臓の音や鼓動を、肌で直に感じられた。 「ちゃんと受け止めてやるから。受け止めて、嬉しいのも悲しいのも、一緒に感じてやるからさ」 恥ずかしげもなくよく言うよ。自分の中のガキんちょが言うけど、今はそんなのに耳を傾けたりはしない。 肩甲骨辺りを軽く叩くように撫でると、一気に強く抱きしめられた。 「ぐぇっ」 「ハニー!ハニー愛している!お前がいてくれたら俺は何も要らないっ!」 すっかり顔を肩口に埋めながら、また泣き出してしまった。 「わぁった、から!」 マジで離してほしい。これは本当切実に。苦しいから。肺が潰れそう。 思いっきり背中を叩くとやっと離してくれたものの、俺の目を見つめる強さは衰えない。 「ハニー……」 そんなに熱っぽく見てくるなよ。 「ったく、ホントしょうがねぇなぁ」 ちゃんと慰めてやんなきゃって使命感に駆られる。 使命感っていうか、胸の奥から湧き上がってくるような、優しい気持ちっていうか。 うまく説明できない、胸の奥からじわじわ湧き上がってくる不思議な感覚。

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