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第111話
「それは俺のせいじゃないぜ、お前が色っぽいせいさ」
途端にいやらしくニヤニヤ笑う。
「ったく、百面相かよお前」
切り替えが早くないと仕事にさし障るから、なんていつか言ってたことがあったけど、それにしても役者みたいな切り替えの早さだと思う。
「きっと彼らも、俺たちみたいに甘い時間を過ごしたんだろうな」
と思ったけど、まだ引きずってるみたい。そりゃそうか、あんな話聞いた後じゃ、さすがの彼もそう簡単に切り替えられるわけないか。
「だな。たぶん、すげぇ幸せだったと思うよ。今の俺とお前みたいに」
なるべく気持ちに寄り添えるように、でも刺激しないように穏やかに答えた。
俺が帯を解いたのと同じように、彼が俺の帯を解く。そのまま袷を大きく開き、両肩から滑り落ちるように浴衣が脱がされていく。
一切抵抗しない。抵抗する理由がない。
「そうだな。きっと、甘くて優しい夜を過ごしていたのかもしれないな」
彼が首筋に軽く唇を寄せながら言う。話し方が柔和になったのをすぐに感じて、少し安堵した。
「絶対そうだよ。ずっと好きだった奴と運命的な再会したら甘えちゃうよ。ぐだぐだに甘える」
首に腕を回しながら、彼の首筋に軽いキスを繰り返す。顔を上げた彼が、唇に優しいキスを返してくれた。
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