113 / 148
第113話
「お前がそばにいてくれるだけで、俺に力が溢れてくること、癒されることには変わりないんだからな」
目を見つめられながら囁かれた言葉に、俺はふと、時折頭を過る彼に対する思いのことを思い出した。
俺はこいつに何かを返せているのだろうか。そんな感じのこと。
俺は俺として彼の隣に存在するだけでいいんだってことなのかな。
って、少女漫画じゃあるまいし、何考えてんだか。
「はいはい、どうもありがとう」
急に恥ずかしくなって顔を背けた。そういうのもちゃんとわかってくれて、深い追求もしてこないんだけど。
「少し暗すぎるか?」
代わりに、舞台を演出するように、ベッドの上を気にかけてくれる。今は隣の部屋の明かりだけが頼りの室内は、なんとなく薄暗い。けど、全く心配ない。
「大丈夫だよ、ほら」
軽く見上げた先、視線で誘導する。彼が目をやった際には、まん丸い月が光っていた。
「最高の間接照明があったな」
おでこにキスを落としながら、軽やかに笑う。
「うん。だからへぇき」
少し舌ったらずになっちゃうのは、俺も彼に甘えてる証拠かな。
「きっとさ、その陰間の人たちも、こんな風にイチャコラしてたんだと思うよ」
彼の唇に触れる。そのままほっぺたを辿って、引き寄せるみたいに首の裏に手をかけ、深いキスをねだった。
ともだちにシェアしよう!