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第113話

「お前がそばにいてくれるだけで、俺に力が溢れてくること、癒されることには変わりないんだからな」 目を見つめられながら囁かれた言葉に、俺はふと、時折頭を過る彼に対する思いのことを思い出した。 俺はこいつに何かを返せているのだろうか。そんな感じのこと。 俺は俺として彼の隣に存在するだけでいいんだってことなのかな。 って、少女漫画じゃあるまいし、何考えてんだか。 「はいはい、どうもありがとう」 急に恥ずかしくなって顔を背けた。そういうのもちゃんとわかってくれて、深い追求もしてこないんだけど。 「少し暗すぎるか?」 代わりに、舞台を演出するように、ベッドの上を気にかけてくれる。今は隣の部屋の明かりだけが頼りの室内は、なんとなく薄暗い。けど、全く心配ない。 「大丈夫だよ、ほら」 軽く見上げた先、視線で誘導する。彼が目をやった際には、まん丸い月が光っていた。 「最高の間接照明があったな」 おでこにキスを落としながら、軽やかに笑う。 「うん。だからへぇき」 少し舌ったらずになっちゃうのは、俺も彼に甘えてる証拠かな。 「きっとさ、その陰間の人たちも、こんな風にイチャコラしてたんだと思うよ」 彼の唇に触れる。そのままほっぺたを辿って、引き寄せるみたいに首の裏に手をかけ、深いキスをねだった。

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