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第114話

「彼らの分まで、しっかり愛し合おう」 そのキスのほんの少し前、彼がまた低い声で囁いた。声の余韻を俺の舌に絡めてくる。 「彼らも、どこかで見ているかもしれないしな」 絡んだ舌先から、透明の糸が引く。笑いながら言うのが、本当に信じられない。 「お前マジそういうこと言うなって」 ああいう話のあとで、シャレにならないから。 しがみつくみたいに抱きつくと、ケラケラ笑われた。 「お化けで怖がるなんて、俺よりもハニーの方が子供みたいだ」 「うるせぇや」 苦手だって思ってたけど、苦手ってレベルじゃなくて本当に嫌いなのかもしれない。 強がって、顔を見せないように抱きつくと、すくい上げるみたいに背中を撫でられる。 「まぁ、話を聞いた限り、彼らがお化けになって出てきても、何も悪さはしなそうだけどな」 知り合いみたいな言い草だった。 「俺たちを見て、祝福してくれそうだ」 「さぁ、どうだか」 「祝福してくれるさ。いつまでも愛し合ってた2人だろう、俺たちと一緒だからな」 「まぁ、な」 本当に恥ずかしげもなく言う。彼は優しく微笑みながら、顔中にキスを落としてきた。 「それに、お化けくらいなら俺が追い払ってやるからな」

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