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第120話
「名前、呼ぶのは、反則」
本当に恥ずかしくて、ついに目をそらした。
「本当に恥ずかしがり屋だなお前は。そこも昔から変わりない」
彼が、笑いながら胸に何度もキスをしてきた。ちょうど心臓があるあたり。あんまりキスされると、唇越しにドキドキしていることがバレそうだ。
「お前だって名前呼ばれると恥ずかしいくせに」
俺だけいじられてるみたいでなんか嫌だ。
抱きついた拍子に、軽く耳を噛みながら、囁くみたいに彼の名前を呼ぶ。
彼が大げさに大きな声で笑った。
「ちょっ、うるせぇな、静かにしろって!」
「すまない、あまりにも可愛らしかったから、最高に興奮しちまった」
「噛まれたのにそんな興奮すんのか」
ちょっと呆れ顔の俺に構わず、そのまま強く抱きしめてくる。
「噛まれたことにも興奮したけど、お前があまりにも優しく俺の名前を呼んでくれたことに、一番興奮した」
とても穏やかに、優しく言うのだった。
「……可愛い」
思わず、口から飛び出していた。
顔を上げて、穏やかに微笑んでいる。
「ハニーがそう言うなら、俺はきっと可愛いんだろう」
そんなことを、とにかく幸せそうな表情で言いながら。
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