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第137話
「とりあえず、ちゃんとイかせてもらえたらいいかな、今は」
彼を慰めたくて誘ったはずなのに、今は俺が達したくて仕方がない。
「そんな簡単な願い、いくらでも叶えてやるさ」
少しこわばった顔をしていた彼の表情が緩んだ。
「頼むな、俺、もうお前じゃなきゃイけねーから」
「嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか。望み通りにイかせてやるよ、俺のプリンセス」
「プリンセスじゃねぇっつうのに」
本当に人をお姫様扱いするの好きなんだからな。
俺の王子様は、またなじませるようにゆっくりと腰を前後させ始めた。
「お前を、愛するようになって、自然と、いや必然的にかな、昔のような、乱暴な気持ちが、嘘みたいに消えちまったんだ、不思議だよな」
腰の動きに合わせ、一言一言息を弾ませながら言う。
「んっ、え?」
俺もつられて息を弾ませながら尋ね返す。
「俺はお前に出会うまで、誰も愛していなかったということだったんだな。1人の人間にこんなに焦がれたことはなかった」
汗も拭えないほど密着したまま言われた言葉に、さっきの彼の涙が蘇る。
この旅館で昔暮らしていた彼と、それを探し出した彼。その立場を自分に置き換えて涙したのは、彼が本当に俺を心から愛してくれているからこその感情移入だったんだろう。
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