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第145話

「……彼らは、今幸せなんだろうか」 隣の彼が小さく呟く。 「やっと一緒に居られるようになって、でもそれが死後の世界というのは、幸せなことなんだろうか」 ぼんやりと呟いた彼に、降ってくるように女将が言う。 「死後の世界は信じられないほど良いところで、その証拠に誰一人現世には帰ってこない。なんて冗談話がありますが、ご存命だった時のお二人の身の上を鑑みると、死後の世界の方が自由で、仲睦まじくいられているのかもしれません」 その言葉の一つ一つが穏やかで優しくて、ホントに天国の人が話しかけてきているみたいだった。 「そうだな、彼らの生涯は、2人が愛し合うにはあまりにも窮屈だったように感じる」 立ち上がった彼につられて立ち上がると、彼は俺の手を握り、そのまま引き寄せて軽く抱きしめてきた。 「俺たちはまだまだこれから、彼らの分も、一緒に居られる時間を十分に楽しもう」 「……多分、死んでもずっと一緒にいると思うよ、俺らは」 「それは間違いないけどな。出会ってしまった以上、俺たちが未来永劫離れることはない」 惚気なのかそうでもないのか、よくわからないことを言いながら、でもお互い同じようなことを思ってたってことを改めて認識して。 俺たちは女将の見送りを受け、1週間ぶりに、下界に続く竹林の道を下った。

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