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第3話

 ――――よくないな。  ロイの検査結果を見て、自然と表情が険しくなっていくのを感じた。  確かにロイと俺の病気の進行具合は同程度だ。  けれどロイは生まれつき心臓が弱い。  大きな発作を起こせば、先に心臓のほうが参ってしまうかもしれない。  俺はきつく目を閉じた。  どんな検査にも決して弱音を吐かず、笑ってみせていたロイ。  その儚げな見た目とは違い、ロイは強い少年だった。  そんな彼にどこか惹きつけられてやまない。    俺の命を懸けて救ってあげたい……君のことを。  午前中の仕事が片付き、わずかに時間が空いた俺はロイの病室を訪ねた。  ノックしようとして扉が少し開いていることに気づく。中からかすかに声が漏れ聞こえてくる。 「……格造さん。ね、北見先生ってかっこいいよね」  立ち聞きする気はなかったのだが、自分の名前が出てきたので、つい耳をすませて聞いてしまう。 「そうですね」  相槌を打つ付き添いの格造の声。 「きっと女に人にもうんともてるんだろーな……」 「まあ。もてるでしょうね。あれだけの美形ですし、スタイルもいいし。おまけに医師としても優秀ときていますからね。患者さんとか看護師の女性にたくさん言い寄られていますよ。きっと」 「そう、だろうね……」  ロイの声がなぜか急にトーンダウンする。 「ロイくん? どうかされましたか?」 「うん……」  なにかを迷うような声音が、細く開いた扉の前に立つ俺の耳に届いた。 「格造さんは僕のお兄ちゃんみたいな人だから、……言っちゃうけど、あのね、僕」 「はい?」 「僕、北見先生のこと好きになっちゃったみたい……」 「は?」  呆気にとられたような格造の声を背に、俺はそっとその場を離れた。

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