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第5話

「それじゃちょっと胸の音聞かせてもらっていいかな」  聴診器をロイの真っ白な肌に当てる。  ロイが自分のことを好きだということを立ち聞きしてしまってから一週間が経っていた。  医師という仕事柄もあり感情を隠すのは得意なので、ロイにはなにも悟られてはいないが、俺はロイと接するとき、緊張してしまうようになっていた。  緊張と言っても嫌な類のものではない。  どこか甘さを含んだそんな緊張感だ。  もう長いあいだ忘れていた感覚。  この気持ちはまるで初恋のよう。  俺はやっぱりロイに恋をしているのだろうか。  胸が痛むような弾むような、どっちつかずの感覚。  諦めと絶望と少しの希望と。  俺の心はロイによって動揺しっぱなしで。  そんな揺れる気持ちを持て余していたある夜、ロイが発作を起こした。

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