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第10話
「な、なに?」
「男に二言はないって言うでしょ!?」
「それ、こういう時に使う言葉じゃない気がするんだけどね。ロイ。何か他の物じゃだめか? ゲーム機とか服とか」
やさしく諭すもロイの目は完全に据わってしまっていて、そんなものは欲しくないと文句を言って来る。
「なんでもプレゼントしてくれるって言ったじゃないか、先生のうそつき」
「うそつきって……」
正しくは『オレにできることなら』という条件付きだったというのに、ロイはそんなことは関係ないとばかりにじとーんとした視線を寄こしてくる。
頬を膨らませ、大きな瞳をうるうる潤ませて拗ねている表情を見せられて、俺は負けた。
医者のオレがついているんだから、なにかあっても対処してあげられるか……。
あとは外泊許可だけど、院長に頼み込めばなんとかなる、か……?
どんなに無理をしてでもロイの願いを聞いてあげたいと思うのは、やはり惚れた弱みというやつだろう。
「……分かったよ。ただし一泊だけだよ」
溜息混じりにそう言うと、ロイは今までのふくれっ面はどこへやらパアッと瞳を輝かせて喜んだ。
「ありがとう! 先生」
「それじゃさっそく君の親御さんに連絡して許可をもらって、病院側にも許可をもらわなきゃな」
「うん」
「それと明日までに体調が悪くなったら、中止にするから。それだけは覚えておいて」
「大丈夫―」
いつものように屈託なく笑うけれどもロイは体に爆弾を抱えているみたいなものだ。
それはオレも同じなのかもしれないけれど、心臓が弱い分、ロイの方がより急変しやすい。
それだけが心配だったが、幸いロイの病状が急変することはなく、無事に翌日の誕生日を迎えたのだった。
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