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第11話

 ロイの誕生日はこの冬一番の寒波がやって来ていて、俺は、体を冷やさないように、もこもこに着込んだロイを連れてタクシーを拾った。 「先生って普段はなにで通勤してるの?」  タクシーに揺られながら、ロイが首を傾げて聞いてくる。 「電車」 「えー? なんか意外。先生ってマイカー通勤ってイメージがあったから」  邪気のないロイの言葉に苦笑するしかない。 「そうか?」  運転免許も車も持っているが、もうずいぶん長いあいだ乗っていない。  それは勿論いつ発作が起きるか分からないからだ。  二人が健康体だったら、いろんなところへドライブに行けたのに、な。  けれどもロイが入院してくることがなければ二人が出会うことはなかったわけで、運命の皮肉さを感じ、俺はロイに気づかれないように小さく溜息を零した。  ロイはオレを好きでいてくれて、オレもロイのことを思っている。  残された短い時間で、オレたちはお互いの気持ちを伝えあうことはできるのだろうか……?  ……その答えは思いがけず早くやってくることになる。

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