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第14話

「どうしてだめなの?」  きょとんとした表情で見上げてくるロイと視線を合わせないようにして、答える。 「……どうしても」  すると、視界の端に移ったロイがどんどん俯いていってしまった。 「北見先生、なんで目を逸らすの? 先生はそんなに僕のこと嫌い?」 「ちがっ……そうじゃなくって」  あまりにも的外れなことを言うロイの方に視線を戻した次の瞬間、その可憐な唇から信じられない言葉が飛び出した。 「……先生。僕の最後の誕生日だから、わがまま、聞いて?」 「えっ?」  最後って……。  思わずロイを凝視すると、ロイはうつむいたまま顔を上げない。  サラサラとした長めの前髪で、どんな表情をしているかはよく見えなかった。 「……ロ、イ?」 「知ってるんだ、僕」 「え……?」  ざわめく胸。  なにか嫌なものが心の奥底から込み上げてくる。    知ってるって、なにを? 「僕は来年の誕生日は迎えることはできないんでしょう?」  ロイの言葉に、俺は激しく狼狽した。 「なにを言って――」 「ごまかさなくったって、いいよ。先生。本当に。自分の体のことは自分が一番よく分かるから……ただの貧血なんかじゃないってことぐらい僕にだって分か――」  そこまで言い、ロイは言葉を詰まらせる。  フローリングの床にパタパタと水滴が落ちた。  ゆっくりと顔を上げたロイが、泣いていた。

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