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第2話

 高校の教室では様々な思惑が飛び交うが、優斗にはクラスメイト達の本心が手に取るように分かる。  優斗は王のように君臨し、周囲の人間を思いのままに動かすことができた。 「兄貴の友達にバイク貰ってさ、それがクソみたいなカスタムしてあんの」  クラスメイトのサトルは譲り受けたバイクを扱き下ろすように言うが、本当は自慢話がしたいだけだ。  優斗は大げさに相槌を打ち承認欲求を満たしてやる。 「写真ある?……すげぇカッコいいじゃん、今度乗って来いよ!」  褒められたサトルは上機嫌だが、この会話が長引くと隣のアツシの機嫌が悪くなる。  プライドの高いアツシは自分からひけらかしたりしないので、優斗の方から話題を振ってやる。 「そういえばアツシ、このまえ女子高の子達と遊んでたよな?どうだった?」  アツシは待ってましたと言わんばかりに語り出す。 「藤女の女はブスばっかだぜ。今度は西女のコ達と約束してるんだ」  アツシは女が好きな訳ではなく、女に好かれる自分が好きなのだ。  そこを媚びない程度に羨んでやる。 「まあよく声がかかるなぁ。このヤリチン」  アツシは、そんなにヤってねえ!と憤るフリをするが、満更でもなさそうだ。 「いいなーアツシ、今度集まるとき俺も誘ってよ」  そこにグループ内では一番地味なヒロキが乗ってきた。 「ハハハッタイプの子相手だと炸裂する“どもり癖”は治ったのか?」  サトルに吃音を揶揄されたヒロキは赤面して俯いてしまった。これはいけない。  ヒロキはいじられキャラではあるが、このコンプレックスには触れるのはアウトだ。  話題を反らす必要がある。 「サトル、言うてもお前、童貞じゃん?」  優斗の突拍子も無い言葉に、童貞ちゃうわっ、と笑って返すサトル。  アツシも、それ関係ないだろーとゲラゲラ笑っている。  横目にヒロキの様子を伺うと笑顔を取り戻していた。  決してヒロキの為に助け舟を出したわけじゃない。  暗い顔をされて場が白けるのは正しくない。  一軍は一軍らしくバカ騒ぎをしている姿が、正しい。
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