11 / 32
ヤキモチ5
その後西園寺はマツバの身体を清めてくれただけでなく、汚れた壁や床までの後始末までしてくれた。
男衆を呼ぶからと必死に訴えたが、西園寺は全く取り合ってくれず…
失禁しているところを見られてしまっただけでなく、後始末までさせてしまい恥ずかしくて情けなくてたまらなかった。
「それじゃあ、今日はなぜ集中できていなかったのかそろそろ理由を聞かせてもらおうか」
すっかり腰の抜けてしまったマツバをベッドの上に降ろしながら西園寺が訊ねてきた。
マツバは一瞬唇を引き結ぼうとしてやめた。
あんな事を散々された後で、誤魔化したりはぐらかしたりするのは今更だと思ったからだ。
「旦那様は……アザミを、どう思われますか」
何だか遠回しな言い方になってしまったが、マツバにはそれが精一杯だった。
「アザミ?…………ああ、先週の………」
西園寺はそう言ってマツバの顔をチラリと見ると、フッと笑った。
「もしかしてマツバはヤキモチを妬いてくれてたのかな?」
「ヤキ……モチ」
「そう、俺が他の娼妓と寝たのが気に入らなかったんだろう?」
マツバ自身も自覚がなかった事をハッキリと言われて、全身の血が沸騰したかのように熱くなる。
しかしもう否定する事はできなかった。
躊躇いながら頷くと、グイと引き寄せられて腕の中に取り込まれた。
逞しい胸板に顔を押しつけると西園寺の心音が耳に心地好く響く。
「先週は断れない相手にアザミの味を知ってこいと言われてね。後々面倒な事になるし、仕方なく抱いた」
「抱いた」という言葉が針のようにチクチクと胸に突き刺さる。
どろどろとしたものが沸き上がってきそうでマツバは男の胸に顔を埋めた。
当たり前だ。
このしずい邸に来て人気男娼のアザミを抱かない男なんているはずがない。
「俺は政界人だから、これからも他の娼妓を指名してしまうこともあるかもしれない。でも約束しよう、ここを奪われてるのはマツバだけだよ」
片手を捉えられると、鼓動を刻む西園寺の左胸に導かれる。
胸がいっぱいになった。
色男が情交後に吐く睦言だと思っていても、心が躍るのを止められない。
「ああ、またその気になってきてしまったな」
腰を押しつけられると、彼の昂りが熱く熱を持っているのがハッキリとわかった。
見上げると雄の欲にぎらついた西園寺の眼差しと視線が絡む。
「………して、くれるね?」
下唇を意味深くなぞられて、燻っていた官能の芯がズクンと疼く。
散々泣かされたのに、この男を前にするとどこまでも貪欲になれる気がするのはどうしてだろう。
「……………はい、旦那様」
素直に答えると彼の唇が弧を描く。
マツバの瞳がトロリと蕩けた。
end.
ともだちにシェアしよう!