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マツバの誘惑

「これはどういう事かな?」 マツバの身体の下で西園寺が不敵な笑みを浮かべながら見上げている。 その眼差しは、これから何が始まるのか面白がっているようだ。 彼のマウントをとっているのは自分のはずなのに、西園寺の余裕のある態度が腑に落ちないマツバは、ぷうっと頬を膨らませると、眦を吊り上げた。 「いつもマツバが好きにされていると思わないでください」 「へぇ………?」 強気なマツバの言葉に、西園寺は片眉をあげる。 しかしすぐに嬉しそうに瞳を細めると口元を綻ばせた。 悔しくなったマツバは唇を噛みしめると西園寺のネクタイに手を掛け、結び目を解き始めた。 今日の彼は最初から意地悪だった。 いつもは蜂巣に入るなりマツバの着物と襦袢を剥ぎ取ると、優しく時に強引に身体を重ねてくるのに。 それなのに、今日の彼は上着を預けるとまず真っ先に食事を注文した。 普段と違う西園寺の行動に戸惑ったものの、彼もそんな気分の日くらいあるだろうと勘案しないようにした。 しかし西園寺はゆっくりと食事をすませると、今度は時間をかけてワインを嗜んだ。 それでもやはり彼はマツバには触れようとしてこないのだった。 一向に手を出してこない西園寺に焦燥と欲情が募る。 彼によって様々な快楽を叩き込まれたマツバは、西園寺を前にするとその欲望を抑える事ができない肉体へと変化させれてしまっているというのに。 そうしてついに耐えきれなくなったマツバは、勢い余って西園寺の事を押し倒していたのだ。 今までこんな大胆な事をしたのは生まれて初めてで、正直自分でも驚いた。 しかしここまでしてしまったからにはもう後には引けない。 ネクタイを外すと、今度はシャツのボタンに手を掛ける。 彼の逞しい胸板が露になり、マツバはごくりと唾を飲んだ。 ベルトを外し、いつもマツバを泣かせているモノを引摺り出すと、それは既に硬く反り上を向いていた。 その男根を目にしただけで後孔が収縮し、身体の奥が焼けつくように熱くなってくる。 マツバは着物の裾をたくしあげた。 もはや帯や襦袢を脱いでいる手間さえもどかしい。 恥も見聞もかなぐり捨てると、双丘の間に彼の昂りを挟みこむようにして腰を落とした。 誘うように腰を揺すると、西園寺のものがますます熱く昂り、その質量をぐっと増す。 「あぁ、凄いな」 感嘆のため息を吐いた西園寺がマツバの下で快感に表情を歪ませる。 彼も感じてくれている。 そう思うと背筋を官能が這い上がり、マツバは夢中になって腰を擦り付けた。 「ああっ……西園寺さま………っあ」 はあはあと荒く息を乱しながらマツバはすがるように西園寺を見つめた。 後孔から双果を辿る細い道を彼の灼熱の砲身が往復するたび、下腹部の奥がキュウキュウと引き絞られ切なくなってくる。 早く挿れてほしい。 この太くて熱くて硬いもので、腹の奥を抉らんばかりに貫いて激しく擦ってほしくてたまらなくなる。 後孔が物欲しげに収縮を繰り返した。 「そんなに腰を振って…まるで発情した猫のようだな」 熱っぽい眼差しを注がれながら揶揄されてマツバの顔が羞恥に染まる。 「……だって……西園寺様がっ…あっ、あっ」 細かく震えるマツバの上体に西園寺の指先がそっと触れる。 既に硬く尖り、存在を主張していた乳首を捏ねられてマツバは背中を反らしながら喘いだ。 「俺が?跨がってきたのはマツバの方だろう?」 罰を与えるかのように両乳首をつねられてビリビリと痺れるような甘い痛みが走る。 沸き上がる被虐欲と快楽に我慢できなくなり、思わず腰の動きが止まってしまった。 「止めたらダメじゃない、かっ」 「ひっんっ……あ、あぁああっ」 気がつくと、彼の凶器の先端がまだ濡らしてもいないマツバの後孔を押し拡げていた。 細腰はガッチリと掴まれ、逃げ場を失った華奢な身体に容赦なく雄根がずぶずぶと入れられていく。 しかし不思議と痛みは全く感じない。 それはマツバがしずい邸の男娼であるからというのもあるが、一番は相手が西園寺だからだろう。 彼にされる事なら何だって快楽に結びつくのだ。 突然の挿入の衝撃と快感に、触れられてもいないマツバの屹立から白蜜が勢いよく弾けた。 「ああっ…あっ……ああっ……っ」 今日は自分が主導権を握るはずだったのに呆気なくイかされてしまい、屈辱と快楽に身体が震える。 しかし恥知らずな媚肉は、彼の灼熱の塊を味わおうと必死に絡み付き、離さまいと吸い付いた。 「全く、ほんとにかわいいったらないな。そんなにこれが欲しかったのか?」 「ほし……ほしい………っ…あっ、もっと……んんっ……そこ……ああっ」 西園寺がマツバの最も敏感な場所を抉るように激しく腰を突き上げてきた。 ガツガツと揺さぶられ、身体がどこかへ飛んでしまいそうなほどの快感に犯される。 目の前が真っ白に染まる中、マツバは羞恥も忘れ、いい、いいと叫びながらひたすら快楽に陶酔した。 振り乱した髪は頬に張り付き、白い肌はうっすらと上気して汗を滴らせている。 「マツバに煽られたから俺も持ちそうにない…っ」 珍しく険しい表情の西園寺が、切羽詰まったように呻くと一際激しく腰を突き上げてきた。 「んんんっ………イく……い…っあああっ…っ」 再び絶頂を極めたマツバは、その屹立から歓びの白濁を噴き上げた。 間断置かず、直ぐに最奥に彼の熱い雄の精が媚肉に叩きつけられる。 その衝撃にも感じてしまいマツバはまた彼の硬茎をギュウギュウと締め上げて達してしまった。 「……はぁ、はぁ…」 脱力し、倒れ込むマツバの身体を西園寺が優しく受け止める。 「かわいくていやらしくてなかなか良かったぞ、マツバ」 満足そうに笑う西園寺にマツバは顔を真っ赤に染めた。 自分から押し倒したくせに、最後にはやっぱり翻弄されて泣かされてしまった。 「今日の…西園寺様は意地悪です」 悔し紛れに呟くと、まるで宥めるかのように唇や頬や瞼に啄むようなキスの雨が振る。 「そんなに怒るな。一度でいいからお前に誘惑されてみたかったんだ」 男くさい笑みを浮かべながら、西園寺は肩を竦めてみせた。 ズルい人だ。 そんな顔をされたら、許すしかない。 「お詫びにもっとよくしてあげよう。乾く隙がないほど濡らしてやるから覚悟してろよ」 彼にしては粗野で嗜虐を含んだ言葉にマツバの瞳がトロリと熔ける。 それはうっとりするほど甘美な誘惑だった。 end.

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