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姫はじめ2

正月中の淫花廓の花代は高い。 特にここ、しずい邸の男娼たちは稀少なため花代は通常の三倍といわれている。 世間が正月休みになると、客たちがこぞって集るので男娼の指名の競争率が高くなるからだ。 以前までは淫花廓も正月休みをとっていた。 しかし、今の楼主に変わってから淫花廓は正月も営業するようになった。 楼主の狙いは『姫はじめ』 姫はじめとは、その年に入ってはじめてする秘め事のことだ。 新しい年を迎えてすぐ男娼たちと甘い時間を過ごせる事を売りにした楼主の戦略に、客たちは瞬く間に食いついた。 今ではお気にいりの男娼に着物を贈り、その男娼と年のはじめ一番に交わる事ができればその年は良い年になると、客たちの間ではげん担ぎのようなものも生まれている。 正月飾りで彩られた蜂巣で、三つ指をついて新年の挨拶をするマツバを見て西園寺は満足げに微笑んだ。 マツバの『姫はじめ』を獲得できたのもあるが自分の贈った着物が思っていた以上にマツバに似合っていたからだ。 はじめの頃こそ幼いと思っていたが、気がつかないうちにこんなにも美しく成長していたとは。 いつも以上に慎ましく、奥ゆかしい振り袖姿のマツバは、花弁が少なくシンプルで清楚な椿の花そのものだった。 「少しお飲みになりますか」 「あぁ、もらおうか」 マツバから酌を受け取りながら西園寺は目を細めて隣に座るマツバを見つめた。 近くで見るとますます美しい。 いつもは軽く結わえてあるだけの髪も高めに纏められているため、うなじが露で色気を感じる。 まるで誘っているようだな。 杯に注がれた日本酒を一気に呷るとその華奢な肩を抱き寄せた。 マツバは一瞬驚いた表情をするものの、すぐに頬を染め西園寺にしな垂れる。 気を良くした西園寺は、マツバの衿合わせから手を忍ばせようとして固まった。 「これはまた、手強そうだ」 ぴったりと着付けられた合わせに行く手を阻まれて西園寺は苦笑を浮かべる。 「西園寺様に頂いたとお話ししたらアザミさんが着付けてくださいました」 恥ずかしげに俯くマツバのうなじに再び瞳が吸い寄せられる。 「アザミか……なるほど」 西園寺は呟くと、淑やかに閉じられていた着物の上前を開いた。 「あ……っ」 すらりと伸びたしなやかな足が露になり、マツバの顔に焦燥と羞恥の色が走る。 「あ…あの、西園寺様…?」 戸惑いながらこちらを見上げるその表情に西園寺の嗜虐欲が刺激された。 「これをほどくのは容易ではなさそうだからな。このまましようか」 「でも、せっかくいただいたのに汚してしまったら……」 躊躇いがちに答えるマツバの太股を妖しく撫でながら、西園寺は意地の悪い笑みを浮かべる。 「汚さないように気を付ければいい。そうだろう?」

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