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お昼ごはん

3限目の英語が終わって、今から約1時間の昼休みになるらしい このサイクルは前の学校でも同じだった 今日は母さんが張り切って弁当を作ってくれた 俺の母さんは元料理研究家 今は専業主婦だけど、昔は料理本なんかも出していて結構有名だったらしい なんてそんなプチ自慢はどうでもいい 問題はここからだ それは俺が転校生だってこと みんなそれぞれ弁当や財布を持って教室から出て行く もちろん教室に残る奴もいたけど… 恐らくは食堂や中庭なんかに向かっているんだと思う 広崎く……アキはチャイムがなった途端女子に囲まれてどこかに連れていかれたみたいで教室に姿はなかった これは、どうするべきなんだろ……… もうぼっち飯覚悟で席を立つ このまま友達できないままだったら悲しいなあ、なんて思った時だった 「おれとご飯たべよ!」 さっきまで隣で漫画を読んでいた健が、くりっとした瞳を俺に向けてそう声をかけてくれた そしてぎいぎいを机を引きずって俺の方に向かう 予想外の展開に俺は若干涙ぐみながら健を見下ろす 健はふんふんと上機嫌でカバンを漁りながら足をばたつかせている ハッとして俺も健の方へと机を向け、一辺をくっつける でも…… 「お前、弁当は?持って来てないの?」 健の机の上に弁当は見当たらなかった 別に弁当じゃなくてもパンなり何なりあると思ったけどそれすらも見当たらない 代わりにポテチの袋とチョコレート、それにでっかいミカンゼリーが机の上を陣取っている 「え?持ってきてるよ?」 お、おい、こいつまさか…… いや、これはおやつだよな…だって炭水化物もメインのおかずも何にも無いもの…… 俺の頭に妙な予想が走った だけどそれを自分の中で否定するように思考を巡らせる 「お前の昼飯って、これ、じゃないよな??」 ニコニコと笑って俺を見上げる健に恐る恐る聞いてみた 正直、何て返ってくるかは予想がついてしまったけど… 「これです!!」 やっぱりな!!!! やっぱり予想した通りだった まだ入学初日だけど、健のことどんなやつか分かってきた気がする… 健はまたふんふ〜ん♪と鼻歌を歌いながらポテチの袋を開けて丁寧に広げている 辺りの空気にのり塩の香りが広がる 人の弁当にイチャモンをつける趣味はないけど、でもやっぱりこれはいかん… これが毎日ってなるともっといかん! 「た、健?お前、毎日こんなの昼飯にしてるの?」 「えへへ……すごいでしょう!」 「………」 俺の質問に健はなぜか褒められたと思ったのか自慢げに笑ってみせた そしてきゃっきゃと手を叩きながらのり塩味のポテトチップスに手を伸ばす 「翔も食べていいよ!」 「う、うん、ありがと……」 そんな上機嫌な健がなんだか少し可哀想に見えてくる いや、本人はこれが嬉しいんだろうけどもっとまともな食生活をしなきゃ…… 昼飯がお菓子だけってのはさすがにマズイぞ 「健、卵焼きあげるよ」 母さんお手製の卵焼きを健に差し出してみると、嬉しそうに笑ってあーんと大きく口を開ける 「やったー!翔だいすきー!」 「美味い?」 「うんっ!おいしー!」 「ほら、からあげも食べな」 そう言って健の口にひょいひょいとおかずを投げ込んでいく 健は食欲旺盛なのかそれをぱくぱくと一口で食べて頬をリスのようにパンパンにして笑顔で咀嚼する なんだかちょっと可愛い……… 今度は俺が作った弁当のおかず食わせてやろう、なんて考えながら健の口に2つ目の卵焼きを放り込んだ ふと教室の真ん中の席に視線を移す 誰も座っていないその席の主が、なぜか少しだけ気になってしまうのはなぜだろう

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