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学校探検
ひとまず健と一緒に昼飯を食べ終えて、それから先は何事もなく平和に過ごすことができた
たまにちょこちょこと廊下を歩いてみたりしたが、カツアゲ等もなく、俺の恐れていたことは何一つ起こらなかった
アキとは保健室で話して以来一度も話ができていない
といっても別に積もるような話があるわけでもないけど、アキとは仲良くできたら嬉しいなって心のどこかで思っていたのかもしれない
というかあんなにいいやつと友達になれたらそりゃ嬉しいに決まってるよな
だけどアキはずっと女子に囲まれていて、やっぱり住む世界の違う人なような気がした
何故かは分からないけど少しだけ心がズキっと痛んだような気がした
放課後、終礼が終わるとたちまち部活動生たちは重そうなカバンを持ち上げて愚痴を呟きながら教室を出て行った
さすが部活動が盛んな学校だ
俺が派手だなんだと言っていた女子達もどうやら部活動をしているらしく、妙なギャップを感じた
部活か、いいなぁ
俺はもともと運動が得意な方ではないし、体育の時間以外運動なんてほとんどしたことがない
俺は中学の時も部活はせずに家に帰っては友達ん家にゲームしに行っての繰り返しだった
正直バスケ部とかサッカー部に憧れたりもしたが、自分が実際にプレイする姿を想像するとなんだか間抜けで似合わなくてずっと帰宅部だった
健は、たしか部活してないって言ってたよな…
なぜか放課後に教室で開かれる女子会に参加してたりするらしい
活動内容はお菓子を持ち寄ってそれを食べながら恋バナや噂話で盛り上がるそうだ
チャイムが鳴るなりクラスメイトのほとんどが教室を出て行ってしまい、放課後の教室は俺と健と物腰柔らかそうな女子4人組だけだった
するとふとアキの姿が頭をよぎった
アキの姿も見えないけど、何か部活をしてるんだろうか…
アキだったら何が似合うだろう
バスケかな、背もすごく高いしガタイも良さそうだったし
あ、でも野球も似合いそうだなぁ…
なんて頭の中でアキを着せ替え人形にしてみる
アキの整った顔や大きな体にはどのユニフォームも似合っていてなんだか羨ましく感じた
俺はとりあえずまだ家に帰る気がしなかったから学校の中を散策してみることにした
学校探検みたいで楽しそうだ
なんて心なしかテンションが上がる
俺はカバンを教室に置いたままとことこと廊下に出る
昼休みの時よりもうんと静かな廊下には、どこからか張りのいいトランペットの音がこだましてくる
きっと吹奏楽部が練習してるんだな
俺がいるのが3階で…廊下の突き当たりにはモニター室があった
この際だから、教室の場所でも覚えておこうかな
西階段を使って4階へと登る
冷たい手すりがひんやりとして気持ちいい
どうやら4階には3年生の教室があるみたいだ
俺はまた廊下の突き当たりまで歩く
4階の突き当たりは美術室と書いてあった
気になってちらりと中を覗くと美術部の人達が大きなパネルを作っているみたいだった
大きなパネルにはなんかどっかで見たことあるような作品…なんだっけ、モナリザ?か何かの絵を模写したものが描かれてあった
俺は美術部を後にしてそのまま今度は東階段で5階に上がる
5階は3年生の教室と生徒会室、それに視聴覚室があった
それに屋上につながる階段も
屋上か…
前の学校は屋上が封鎖されていて立ち入れなかったがここでは違うらしい
行ってみたい好奇心と不良がたむろしてそうで怖い気持ちが湧くが、後者の方が優勢のようだ
俺は屋上に立ち入ることなく次の場所に向かった
しばらく学校内を歩いているうちに俺がいる棟は隅から隅まで見尽くしてしまったことに気が付いた
なんだか楽しくて、あっという間の時間だったような気がする
もうそろそろ帰るか…
今日は母さんがローストビーフを作るって言ってたし、コツ教えてくれるって言ってたし
そんでご飯の後はゲームの続きをしよう
そんな風に今日の夕方の予定を立てながら、今度は中央階段を使って教室まで戻ろうと冷たい手すりに手をかけた
そのとき、どこかから誰かの話す声が聞こえた
誰かいるのかな…ってそりゃいるか
だけどなんだか普通の話し声とは少し違うような妙な空気を感じる
盗み聞きってよくないと思う
でもそれ以上に俺の好奇心が暴れてるんだ
ちょっとだけなら……いいよな……………?
と、俺は心の中で言い訳をして好奇心のままに声のする方へと音を立てないように歩いた
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