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漫画の主人公みたいな※

※こちらのストーリーは2017年版にはなかった新エピソードです。 (タイトル欄に※印が付いているもの=新エピソード) 「おれこの間突き指しちゃってさぁ」 「気をつけろよ、大会近いだろ」 「お前ちょっと筋肉付いたんじゃね?」 「最近鍛えてるんだよね」 2限 今日はこの学校に転校してきてはじめての体育の授業だ 女子が出て行った教室で、俺は真新しい体操着に袖を通している この学校でも体育は男女別 男子は体育館でバスケットボール、女子はグラウンドでテニスをするそうだ 「バスケ、高村はオレのチームに入れよな!」 「あ、う、うん、ありがと……」 「お前そこそこ背あるし、バスケ得意?」 「いや、そんなに………」 前の席の山本と話しながらめくれた裾をすとんと下ろして制服を丁寧に畳む サッカー部所属の山本は、それなりに筋肉もついていて日焼けもしてて男子って感じで何だか憧れる 自分の細っこくて白い腕と見比べると、心の中で思わずため息が溢れる バスケかぁ………前の学校でもやったけど、俺そもそも球技苦手なんだよなぁ 授業内容、縄跳びとか短距離走とかにしてくんないかな むむ、と眉をひそめると、山本が変な顔と言ってからかってくる 「輝ぁ、お前また筋肉増えたんじゃね?」 「いや、そんなことないって!」 「マジで高校生かよって体してるよな!」 「中学の頃から習慣で筋トレしてるだけだって」 「羨ましいぞ〜!」 教室の真ん中、つまりはあの人気者の周りでは わちゃわちゃと雑談が繰り広げられている 声に釣られて目線を向けると輪の中心にいるアキは上半身裸のまま男どもに筋肉をべたべたと触られて笑っている うわ……なにあの筋肉… 本当に俺と同じ高校2年生の体か…? 思わず見惚れてしまうくらいに鍛え上げられたアキの体 じっと見つめながら自分の腕を曲げて力こぶを作ろうと試みるも筋が出るだけで筋肉のきの字も無い 「くそ………羨ましいな……………」 不意にボソっと口から出てしまう本音を、誰にも聞かれてないかと確認する こんなの口に出したら何か恥ずかしいよな もう一度だけ、アキの方を見る 体操服を着たアキの体は、やっぱり服の上から見ても隣の男子より分厚くてかっこいい 俺の憧れる男の体ってきっとあんなのだ 「!」 不意にアキがこちらを向き、バチっと目線が重なる わ、わ〜〜〜! ガン見してたのバレちゃったかな、きもかったかな… びゅんっと顔を逸らして下を向く そして何事もなかったかのように制服のシャツを無理やりカバンに押し込める もう一度だけ、と思いまたちらりとアキの方を見た 「うっ……!」 すると今度はアキが俺の方を向いてふんわりと微笑んできた 細められた瞳にキラリと輝く白い歯が、俺にイケメン攻撃を食らわせる うわっ………!なにあの爽やかスマイル みんながアキが人気だって言ってた理由がわかった 「おい高村、さっきからひとりでどうした?」 「へっ!?い、いやっ、なんでもない!」 「面白いやつだなー」 「ほ、ほら、体育館行かなきゃ!」 「あ!翔がおやつ取った!」 イケメン攻撃を食らってダメージを受けていた俺を見た山本がそう言ってはは、と鼻で笑う 指摘されて恥ずかしくなった俺は、隣でおやつを食べる健の手からおやつを取って体育館へと向かった 「ヘイパス!こっち!」 「いけっ!」 「ナイッシュー!」 ダン、ダン、とバスケットボールが床を鳴らす キュッキュッと心地の良いシューズの音を聞きながらコートの横に座りボールを1つ抱えて試合を観戦する 試合に出ている健をじっと見つめる 健は小さい体をうまく使ってぴょいぴょいと人の壁をすり抜けてパスを出す あいつ、すばしっこくて運動神経いいな… ふむ、と感心しながら膝に抱いたボールを撫でる 一方対戦相手はというと……… 「輝!パス!」 「おうっ!」 「いけっ!きめろっ!」 「輝ナイッシュー!!」 背の高いアキがレイアップシュートを決める ぺらりと得点板が捲れ、アキのチームが一歩リードする 華麗にシュートを決めたアキは、チームメイトとニコニコ笑っている みんなアキに抱きついて、たった2ポイントを喜んでいる キラキラと輝く汗 汗をかいても走っても、その輝きには拍車がかかるばかりだ 「輝くん、本当カッコいい…♡」 「バスケしてる輝くん、最高……っ!」 「なんであれで彼女いないんだろ」 「いいじゃん、いたらいたで嫉妬しちゃうし」 体育館とグラウンドをつなぐ扉には、テニスの授業中であるはずの女子がわらわらと集まってアキを見つめてうっとりしている 本当にあるんだ、こんな光景……… まるで漫画の中の住人になったみたいな気分だ それくらいアキの人気が常軌を逸していて漫画の主人公みたいだってこと 「ありがとうございましたー!」 アキのチームと健のチームの試合が終わる 審判の合図で頭を下げると、健がちょこちょこと走って俺の所へ戻ってくる 「疲れたぁ、おれおやつ食べたぁい」 「本当、お前の体はおやつで出来てるな」 「ふふ!」 「褒めてないからな」 「ぶー」 戻ってきて早々おやつを欲しがる健の頭をうりうりと撫でてじゃれ合う ちなみに試合はアキチームが勝利した アキは額を流れる汗を体操服の裾で拭っている 大胆に見える腹筋はやっぱりバキバキに割れていて、初見でなくても思わず驚いてしまう それを見た女子がまた歓声を上げる てか俺、ちょっとアキのこと見すぎかも……… 無意識のうちにアキのことを視線で追ってしまっている気がする それになんだか、少しだけドキドキする なんだこれ、と思いながらこてんと首をかしげる 「高村ー!次うちのチーム試合だぞー!」 「は、はーい!」 「次、翔の番だね!がんばって!」 「う、うんっ…」 山本に呼ばれた俺は持っていたボールを健に渡すと、解けていた靴紐を結び直して立ち上がった

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