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ムラムラ

翔を家まで送り届け、去り際に翔にキスをしてオレはまっすぐ家に帰った はじめて恋人としてキスをした 穏やかな心で触れた翔の唇はふんわりと柔らかくて小さくて、腕を回した腰は相変わらず驚くほど細かった 少しからかうだけで顔を真っ赤に染める翔が可愛くて、何度も口説くように甘いセリフを贈った 全て本心で言った言葉に変わりはないが オレ、本当に翔と恋人になれたんだよな………… まだ夢の中にいるようだ 好きだった相手と結ばれて 恋人のキスをして 久しぶりに食べた手作りのおにぎりは、涙が出るほど美味かった 優しくて照れ屋で可愛い翔 いつもは恥ずかしがり屋なのに、ここぞという所で勇気を出してくれる その勇気に何度も救われた 初恋を捧げた相手が翔でよかった そう心から思う だがそんな純粋な好意もあっという間に過ぎ去っていく オレの頭の中はもうすでに下心でいっぱいだ キスをして、細い体を抱きしめた それだけでオレの醜い気持ちはみるみるうちに加速して先走る あの細い腰を突いたらどうなるだろう 翔はどんな声で啼くだろう 白い肌は、どんな触り心地だろう なんて、頭の中は翔のことでいっぱいだ しかも少しエッチな想像力が働いてますます妄想が膨らむ 頭を働かせているうちに自宅マンションに辿り着く そのまま自転車を駐輪場に停め、エントランスを抜けてエレベーターで自室へ向かう オレは今実家を離れて一人暮らしをしてる 父親の言いつけで高校に入るとオレたち兄弟は一人暮らしをさせられる オレは厳格で自分勝手な父親と離れることが出来て清々しているが面倒臭がりな兄貴は当時大分ごねていた オレが住んでるのは30階建てのマンションの10階 このマンションは親戚の持ち家だ エレベーターに乗っていると自身の下半身に違和感を覚える 「あー…………」 すぐに違和感の正体に気付く 原因なんて、考えなくたって分かる ガチャリと自室の鍵を開け中に入る そのままリビングへ向かいカバンをどさっと床に置くと、オレはベルトに手を掛けた 制服のままベッドに座り、ズボンから硬くなったものと膨らんだ玉を取り出す すでに興奮状態のそれは血管を浮かび上がらせ熱り立っている 「はぁっ…………」 それなりに使い込んで赤黒くなった幹を利き手で握る 手のひらに当たる血管がどくんどくんと脈を打つみたいに揺れている それを慣れた手つきで上下に擦り、先端を指先でくじく 少し弄っただけで割れ目からはドロドロと濃い先走りが漏れる 「……ッ、………はぁ………」 普段はAVなんかを使うこともあるし、むしろ本当にセックスをすることも多々あった 翔と付き合う前までは色んな女性と関係を持っていたし、セックスの気持ちよさは体にしっかり刻まれている それなのにオレの頭は翔のあの真っ赤になった顔や、キスした時のとろけた顔を思い出す まだ未知の領域だというのに想像の中の恋人の方がよっぽど抜ける 右手をさらに激しく動かし夢中で扱く とろとろと溢れる先走りを潤滑油代わりにして、さらにスピードを速めていく 「っ……は、ッ……翔っ………」 想像の中で翔を丸裸にする 翔の細くて白い身体をオレの手がするすると撫でまわす 恥じらう翔の姿を想像するだけで、クる 「……っ!……………は、はぁ……」 少しいきむと、左手で構えたティッシュに真っ白な欲を吐き出した 勢いよく飛び出したそれは昔から量が多めで色も濃い 人並み以上の性欲は時としてオレの本性を剥き出しにする 抱きてぇ………… それしか考えられなくなるくらいに興奮状態にあるオレのものは一度達したにも関わらずまだ硬い 興奮しきったオレの頭の中は今日できた恋人のことでいっぱいだ 当たり前だろ、電車で抱き合ったりキスしたりしてんだ それに興奮しない男がどこにいる 「あー………オレ重症じゃん………………」 そう呟いて少し冷静になるよう努力する そもそもまだ恋人になって1日目 手を出すには早すぎるし、オレには翔を襲って泣かせた前科もある そんなオレが早々に手を出すにはあまりに節操が無さすぎる 少なくとも1ヶ月は我慢しなければ……… そう心の中で制約を取り付ける 少しずつ翔との距離を縮めて、翔ともっと打ち解けられてからでなければ 軽い奴なんて思われたくない 今までこんなこと考えもしなかったのに 言われるがままに脅されて付き合って抱いてさっさと別れての繰り返しで 好きでもない相手を思いやるなんてしなかった 我ながら嫌な男だ 翔の前では優しくて良い男を演じているが、本当のオレはこんなにも浅はかで翔を抱きたくてたまらないんだよ 真っ白な翔を汚したくて仕方ないんだよ 「っ……………はぁ、ッ…」 熱り立った自身にもう一度手を掛けそれを上下に擦る 翔の声、聞きたいな 今日は夜にでも電話を掛けてみようかな 目を閉じるとまた翔の顔が浮かんでくる ぱっちりとした大きな瞳でたまに上目遣いしてくるのがすごく好きだ キスをするとぎゅっと強く目を瞑るところも好き 照れるとすぐにそっぽを向くところも、耳まで真っ赤にして悪態を吐くところも全部好きだ 早く抱きたいよ、翔 ごめんな翔、こんな醜い気持ちで綺麗な翔を汚して 「っ…………翔ッ………はっ……ッ」 それからしばらく オレは広い部屋でムラムラした自身を鎮めるため、ひたすら自慰行為に没頭し続けた

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