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ひみつの屋上※
※こちらのストーリーは2017年版にはなかった新エピソードです。
(タイトル欄に※印が付いているもの=新エピソード)
次の日の昼休み
「健、今日の………」
「おっ、おれ今日鬼ごっこだからっ…!」
「えっ、健!?」
いつものように午前中の授業が終わり、隣の席の健に声を掛けた
今日のおにぎりはお前の好きなツナだぞ、と言おうとしたその時健が意味不明な言葉と共に教室から猛ダッシュで飛び出す
お、鬼ごっこ………?
ぽかんと突っ立っていると、アキから肩を叩かれ意識を取り戻す
「今日は健、鬼ごっこの日らしいな」
「お、鬼ごっこって何……?」
「実はな………」
アキに事情を尋ねると、はぁとため息を吐く
しかもアキだけではなく教室のみんなも同じ反応をして再び弁当と向き合う
どうやら健の“鬼ごっこ”とは、
年に数回行われる鬼の生活指導牛島先生との学校内バトルのことらしい
なんでも、毎度のごとく赤点補習をサボり続けイエローカードが貯まると牛島先生からの呼び出しがあるらしい
そしてその日の昼休みは決まって学校中を駆け回る鬼ごっこと化し、みんなそれを日常として受け止めているとのことだ
それに捕まると地獄の補習が確定し
逃げ切るとまたイエローカードの積み重ねに戻るそうだ
この仕組みは牛島先生が考えた、勉強嫌いの健のためのお仕置きかつゲームらしい
「健、あいつどんだけ補習嫌いなんだよ………」
「まぁまぁ、あれはあれで見てて面白いんだぜ」
「ま、補習に出ない健が悪いか」
みんなもむしろイベントのように楽しんでいるらしく、今回はどちらが勝つかで賭けをしている人も見えた
ふむ、と頷き俺はカバンから健用のツナおにぎりを取り出す
そしてそれを健の引き出しにそっと入れる
「今日はオレと翔の2人か!」
「うん…」
「じゃあさ、今日は違うとこ行かね?」
「へ?」
アキの提案で連れて来られたのは屋上
転校してきた日、屋上にも行ってみたいなあなんて思っていたが実行はしなかった
だがどうやらここの屋上への扉には鍵が掛かっていたらしく、そもそも入ることすら出来なかったらしい
だが今俺たちは、その屋上にいる
「うわっ…………すご……………!」
はじめて降り立った屋上はごく普通だが、その景色は絶景だった
広い学校の敷地が上から一望できる
自分が普段使っている棟から立ち入ったことのない棟、体育館や講堂まで全てが見渡せる
この屋上へは、アキが持っていた鍵で侵入した
「何で屋上の鍵持ってんの!?」
「これな、恭ちゃんが内緒で合鍵作ってくれたんだ」
「恭ちゃん?」
チェーンの付いた鍵を人差し指でくるくると回すアキ
どこかで聞いたことのあるような“恭ちゃん”という名前
うーん、と自分の記憶を探り一致する人物を模索する
クラスにキョウって名前の奴はいないし、だとしたら先生だろうか
「あ!!!」
しばらく悩んでいると、転校初日の出来事を思い出した
俺が泣き出して、アキに手を引かれて仮病で保健室に行った時の出来事
確かその時アキが保健室の先生のことを“恭ちゃん”と呼んでいた気がする
「保健室の先生だ!」
「あったりー!オレのいとこなんだ」
「えっ!?そうなの!?」
「そ、オレの父親のお姉さんの息子が恭ちゃん」
ここで更なる事実発覚
わりかし重大な気がする事実もさらりと告げ、いつものように爽やかな笑顔で鍵をポケットにしまうアキ
あの独特の雰囲気と喋り方のあの先生が、アキの………
思い出してみると確かに目元が少し似ている気がする
纏った雰囲気は違うがどこか似たようなものを感じるような気がしなくはない
「ひとりになりたい時、たまに来てたんだ」
「そ、そっか………」
「あ、悪用はしてないぜ?」
「わ、分かってるよ…………」
ひとりになりたい時
きっと俺が転校して来る前、ここはアキの逃げ場だったのだろう
何だか胸がきゅっと締め付けられたような感覚になる
こういうことも明るく話してしまうアキ
そんな明るい振る舞いに、少しだけ不安になる
アキと自分の分の弁当2つを持った手をぎゅっと握りしめる
「ここに誰か連れて来たの、はじめてだぜ!」
「え………」
「はじめてが翔でオレすっげえ嬉しい!」
だけどそんな不安をよそにアキは明るくにっこりと笑う
目尻に笑い皺が多く出るアキの笑顔はやっぱり少し幼げで可愛い
アキの笑顔に釣られて俺も頬が緩む
はじめて連れて来た誰かが、俺なんだ…………
梅雨なのに珍しく青く晴れた空
そんな空の色は爽やかなアキにぴったりだ
そんな綺麗なアキに見惚れてしまったなんて、俺は認めないけど
「な、食べよ!オレ楽しみにしてたんだ!」
「う、うん!これ、アキの分だから………」
「やったー!ありがとな!」
持っていた弁当を手渡す
今日の弁当は焼き魚ときんぴらがメインの和食弁当だ
きっと一人暮らしで不健康な生活を送っているであろうアキにはぴったりだと思う
アキは弁当を受け取ると俺の手を引いていつも座っている日陰へと案内してくれた
アキと並んで座り、弁当を広げる
弁当を見てどんな反応をするのか、少しだけどきどきする
「うわっ!すげぇ!これ本当に翔が作ったの!?」
「そ、そうだけど………」
「マジ!?売り物みたいに綺麗だな!」
「大袈裟だから………」
アキの反応、100点満点
こんな風に喜んでもらえたら作った甲斐があったというものだ
まあ恥ずかしいし俺は素直に喜んだりしないけど
弁当を眺めてキラキラと瞳を輝かせるアキ
そんな横顔がやっぱり可愛いけど、それを口に出すのも俺には照れ臭いからやめておく
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