62 / 234

お姉ちゃん相談室

逆上せかけながら風呂から上がり、またいつものように冷蔵庫からペットボトルに入ったミネラルウォーターを持って部屋に向かう 自分の部屋に向かおうと階段を登っていると、俺の隣の部屋から姉ちゃんが手招きをしてくる 「翔、ちょっとおいで」 「ん、何?」 「いいから、こっち来なさい」 今から気晴らしに新しいスマホゲームでもしようと思っていたんだが、姉ちゃんに呼ばれては仕方ない 俺は自分の部屋に入ることなく姉ちゃんの部屋に足を踏み入れた がさつな性格や見た目に反して意外と片付いた部屋 料理は苦手な姉だが実は片付けは俺よりずっと上手だ 「どう?最近輝とは」 「ど、どうって……別に……………」 「ふーん………」 部屋に入った途端に不躾な質問が飛んでくる なぜこうもデリケートな問題にまで安安と踏み込んだ質問ができるのだろう 別にどうというほど1ヶ月前と何も変わっていないので、俺は素っ気なく返事をする それに素っ気なくふうんと言いながら、俺の首に掛かっているタオルで頭をがしがしと拭かれる 「進展は?あったの?」 「はぁ?なに進展って」 「あんたねぇ、分かんないの?」 座りな、と言われベッドに腰を下ろす そしてまたどこからともなく取り出したドライヤーで、勝手に俺の髪を乾かし始める ったく、進展って何のことだ…… 「だから、エロいことしたかって聞いてんのよ」 そう思った矢先だった 姉の口からもっと意味不明で不躾な質問が飛び出した エ、エロいこと………!? エロいことって何!? 俺がアキとそういうことしたかって聞いてるわけ!? 「し、してないよ!なっなんでそんな…」 「はぁ?あんたらもうすぐ1ヶ月でしょ?まだヤってないわけ?」 「やるって何が!?」 「だから!セックスしたかって言ってんのよ!」 言い合いのようになりながらお互いに乱暴に言葉をぶつけ合う すると痺れを切らした姉が怒鳴るように言って、俺の頭をべちんと引っ叩く 姉ちゃんはぶつぶつと文句を呟きながらまた俺の髪を手際よく乾かし出す セ、セックスって………… あの、セックスってあれだよな 付き合ったり結婚したりしてる男女がその、入れたりズコズコ擦ったりするいわば性行為というやつだよな そりゃ俺も男子高校生だしそれがどんなことかくらいは知っている もちろん俺がそれをしたことなんて無いが というかセックスって男同士じゃ出来ないじゃないし 「し、してないから……そもそも男同士だし」 「は?男同士でも出来んでしょうが」 「え、できないよ」 「知らないわけ?見る?検索してやろうか?」 「ちょっ、いい!いいって!!」 そう言って机の上に置いてあるスマホを手に取り、検索画面を開く それを慌てて阻止しスマホを奪い取る 返せ、と言われて頭を叩かれしぶしぶスマホを渡すと電源を切ってベッドに放り投げる はぁ、とため息を吐き一度は安堵するも、別の不安が俺を襲い出す で、できるって………そんなの……………… 「輝、溜まってるんじゃないの〜?」 どうしたら良いか分からなくて俯いたままモジモジしていると、できたよと言われまた頭を叩かれる 叩かれた頭を自分でさすると俺の濡れた髪はすっかりと乾いている アキが溜まってるだなんてそんなわけ… そもそもアキが俺とそういうことをしたいと思っているわけも無いし だって俺は女子みたいに胸もなければ柔らかくもない こんな至って普通な男に欲情する男がどこにいると言うんだ 「別にアキが俺としたいかなんて、分からないじゃん…」 「そう、あんたには分かんないんだ」 「う…………」 いつもよりも冷たくあしらう姉 そんな姉の言いたいことが理解できなくてまた下を向く すると上からはぁ、と深いため息が聞こえる 「ほら、もういいや、出てけ」 「ちょっ、何で蹴るんだよっ」 「不健全な男子高校生なんて邪魔邪魔、どけ」 「いたっ!蹴るなってば…!」 それからもう用無しだと言わんばかりに今度はげしげしと足蹴にされ部屋の外に追いやられる 俺の体が部屋の敷地から完全に出たのを確認すると勢いよく扉を閉められる さっきから、来いとか出てけとか何て自由なんだ……… 「なんなんだよ……ゴリラ………」 姉の部屋の扉の前にぽつんと突っ立って呆然とする俺 ぽつりと一言、姉に向けた悪口を呟いてみる するとがちゃりと扉が開き、小さく開いた隙間から姉ちゃんの大きな目だけが覗く 「あんたは今の関係に満足してても、輝はそうじゃないかもね」 そう言い残すとご飯できたら呼んで、と言ってまた勢いよく扉を閉めた

ともだちにシェアしよう!