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輝の独占欲

翔を見つけた時、何もかもびしょ濡れだった だが頬だけは違う水が流れたことにすぐ気が付いた 翔はオレが翔のことを嫌いになったと叫んだ もう好きじゃないんだろ、なんで優しくするんだって涙を雨に隠して泣いた ここではじめて、オレはまた過ちを犯してしまったことに気付く オレはそんなつもりじゃなかった なんて言ったら都合の良い言い訳に聞こえるが、本当にそんなつもりじゃなかった 翔をデートに誘って、最高の記念日にするつもりだった オレたちのはじめての記念日、最高のものにするつもりだった だがオレが見たあの夢のせいで、オレは平常心を保つことができなかった その結果がこれだ 翔をこんなに傷付けていることに、今の今まで気付かないなんてオレは最低だ 翔のこととなると、いつもオレはダメになる オレは翔の腕を掴んで引き寄せ嫌がる翔に無理やりキスをした 艶のある唇を割って、舌を思い切りねじ込んだ 1ヶ月は手を出さないって決めたけど、もう無理だ 明日で付き合って1ヶ月の記念日なのに、あと1日の所でオレはルールを破る 翔に触れたくてたまらない もうほんの少しも我慢できない 翔にキスしたい 翔を抱きたい 翔の全てをオレのものにしたい 翔の全部が欲しい オレは翔を抱き寄せ、傘に隠れて熱く一方的なキスをした はじめて翔の腕を強く掴んだ しっとりと濡れた翔の唇は雨の味がした 冷たく湿った細い腰はビクビクと震えていた 「ぷはっ、はぁっ……は……はぁ……」 しばらく繋がった唇を解放し翔をじっと見つめる 翔は大きな瞳で一度だけオレを見上げると、ふっとばつが悪そうに目を伏せる 伏せられた長いまつ毛には雨粒か涙が定かない小さな雫が散りばめられていて、そんな姿も美しく思う 「翔、オレ……っ」 「うわっ………!?」 傘を放り出して翔を抱きしめた 大粒の雨に降られながらも、ぎゅっと強く なあお願いだ オレが翔のこと嫌いだなんて思わないでくれよ 勝手に決めないでくれよ オレは世界一翔のことを愛しく思っているのに 「な、翔、頼むから」 「へ………………?」 「お願いだから、オレの気持ち勝手に決めつけたりしないで…………」 言葉を強めて言った オレが嫌ってなんていないことを分かって欲しくて、もっと強く抱きしめた 心臓がばくばくと鼓動する 翔に告白した日と同じくらいに速い鼓動は、きっと翔にも伝わっているはずだ 「今日は翔のこと、帰さないから」 そして翔の瞳をしっかりと見つめて言った ぱちりと大きな瞳を瞬きさせる翔は何も言わずにぽかんとした表情を浮かべる 今日は帰さない 帰したくない もうオレの我慢も限界なんだよ 自分勝手なオレでごめんな、翔 それから翔の腕を引っ張ってオレの自宅マンションへと向かった 翔は何も言わずにオレに付いてくる 途中で思わず早足になってしまっていることに気付きそれとなく歩幅を翔に合わせる 翔に気付かれないように、しれっと恋人繋ぎに握り変える マンションに到着し、10階にある自宅の鍵を開け翔を先に中へ導く 尻込む翔の腰を押して部屋の中へ入れ鍵を掛けると、もう我慢は効かない 「お、おじゃまし………んんっ!?」 翔を扉に押し付けガッと両手で翔の頭を固定して強引に口を塞ぐ 今度はすぐに舌を入れると、また角度を変えながら激しくキスを施す 「ぁう……んっン、んむ…ッんぅ……」 すると次第に翔も夢中になって来たのか、まぶたを下ろしてオレの頭をその細い両手で掴んだ そして翔自ら舌を絡めてくる 静かな部屋に響く水音 翔の腰と背中に腕を回し、冷たくなった体をこれでもかと言うくらいに密着させて激しくキスを続ける 翔がこんなにも積極的になってくれることが嬉しくて、オレは下半身に携える自身を少しずつ硬くしていく だけど今度は恥ずかしいなんて思わない オレたちは正真正銘、恋人なんだ 変に意識して翔を避けてしまった あの夢の熱を思い出してしまわないように、自制した だけどもうそんなもの必要ない 今日オレは翔を抱く 翔の全部をオレのものにする オレの全ても、翔に捧げる もう今までみたいに我慢しないし もう翔のことを悲しませたりなんかしない 「んぅっ………ン、んっ、んんッ………」 「翔っ、しょう………っ、んっ……」 「ぁう……んっ、ン………ンぅ、ん……」 翔の唇を激しく貪りながらオレは決意を固める 背中に回された翔の腕がその力を増して、オレはもっと心を踊らせる 次第に翔の脚が震えてずるりと地面に近付いていく 腰を抜かした翔の唇をやっとのことで解放すると、はぁはぁと肩で息をしてえづいている それでも名残惜しそうに唇に触れる翔を見て、オレはまた自身を硬くする それから翔をお姫様抱っこして脱衣所に運んだ 長い時間雨に降られた軽い体は冷たく冷えきっていて、放っておいては風邪を引いてしまう 人生ではじめてしたお姫様抱っこ 今まで求められても、したことはなかった またオレのはじめてを、翔に捧げた 「上がったら、ちゃんと話そ」 そしてそう言って翔にキスをして脱衣所の扉を閉めた 言葉の通り、オレは全てを翔に打ち明ける 誤解を解いて翔に愛を伝える これはオレのミッションなんかじゃなくて、したいからすること 一旦濡れた制服を脱ぎ髪と体をタオルで乱暴に拭いて翔の着替えを用意する このTシャツ、翔には大分大きいけどこれはこれできっと可愛く着こなすんだろう なんて恋人の姿を想像するだけでまた硬くなる 「1回抜いとくか……………」 勃起したままでは少し格好が付かなくて、オレは立ち上がり上半身裸のままトイレへと向かった 興奮した自身と脳を落ち着かせる名目で緩く勃ち上がったそれを取り出し右手で擦る 微かに聞こえるシャワーの音をBGMに、これからのことを想像しながら自身の熱を鎮める 翔が上がってきたらちゃんと話をしよう 寂しくさせた分、目一杯甘やかそう もっとたくさん好きだって言おう そんで翔の心も体も完全にオレのものにするんだ 翔はきっと自分のことを重いやつだと思っているに違いない だが重いのはきっとオレの方だよ オレの方がずっとずっと翔のこと好きだから オレの独占欲、舐めないでくれよな

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