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好き

アキの左膝の上に座って、すぐ間近にあるアキの横顔をじっと見つめる 筋の通った高い鼻筋が大人っぽくてハンサムで思わず見惚れてしまう 「オレ、翔が好きだよ」 「んっ…………ん…」 「翔のことが好きで好きでたまんねえよ」 アキは何度も好きだと口にすると、俺の肩をぐっと抱き寄せ俺の首筋に優しく口付け始めた ちゅ、ちゅ、と優しく柔らかく施されるキスを俺は抵抗することなく大人しく受ける 「好き、すげえ好きだよ………」 「ンっ………ぁ、ん………っ」 「嫌いになったなんて思ったりしないで」 どさっとベッドに背中を付ける 俺に乗っかるようにして何度も何度もキスをされる アキの唇が触れるたび、ふわふわした気持ちになる 押し倒された俺は抵抗もできずに顔を赤くするだけ なんかちょっと、エッチな気分になってくる… 「う……嘘じゃない……………?」 「ん、嘘じゃないよ、翔が好き」 俺を押し倒し跨って何十回もキスを繰り返すアキに恐る恐る問いかける するとアキは一度首筋から唇を離すと、俺の顔を見つめて頷いた アキ、俺のこと嫌いになったんじゃなかったんだ…… 全部俺の勘違い、だったんだ…… 「ごめん、辛い思いさせた」 「んーん……俺も、ごめん…………んっ…」 お互いに謝ると、アキは俺の謝罪に対して食い気味に首を横に振り優しく微笑む そして今度は俺の唇にちゅうっと吸い付くと、またねっとりとしたキスをされる 俺今日、アキとキスしてばっかだ………… 「んっ………ふっ、ンっ……んんッ…」 「翔……ん、好き…………っ」 キスをしながらでもアキは俺に好きだと告げる さっきから何回好きって言われたかこっそり数えていたけどもう忘れてしまった アキの腕にぴたりと手を触れる 俺の温かい肌とは違いアキの肌はひんやりと冷たい 「アキ、まって…まって………っ」 危うく流されてしまうところだったが、ここで一度アキのキスを止める 肩をべしべしと叩くと今までの強引さとは違いすぐに言うことを聞いてくれる 「アキもシャワー浴びてきて、体冷えてる」 そう言ってアキの体をぐっと押し起き上がる するとアキはまた餌を目の前に待てをさせられた子犬のような顔をする そんなアキを諭すように目を見ると、しゅんと耳を垂らす 「いや、オレは……」 「だめ、アキも風邪引くだろ?」 「えー……」 「アキがシャワーしないなら、俺話聞かない」 「う…………わかった」 もう一度念を押すように言い、半ば強引に脅し掛けるとアキはしぶしぶ頷きベッドから立ち上がる それでも立ち上がったアキは、名残惜しそうに俺の手をにぎにぎと握ってくる そんなアキにほら、と言うともう一度分かったと頷いた 「オレが上がってくるまでの間、ひとりで待てるか?」 「うん、大丈夫」 「ん…いい子………」 アキにそう問われそう答えると、アキは俺の前髪を右手ですくってそっと額にキスをした 触れるだけのキスはこんなにも安心するし心地が良いことを知った 何だか子ども扱いをされた気もするが、今日は特別にお咎めは無しだ 最後に俺の頭をくしゃっと撫でてアキはお風呂場に向かった アキが戻ってくるのをベッドに座って待つ これからアキとどんな話をするのか、アキがどんな話をしてくれるのか頭の中で考える きっと俺のことを避けていた理由だって、アキは包み隠さず教えてくれると思うが、それを聞くにも多少なりとも勇気はいる もしかしたら俺を鬱陶しく思ったのは事実かもしれないし…… 今までの俺ならそう思っていたに違いない だが多分アキが俺に打ち明けてくれるであろう本当の理由は多分違う 「好き、だって……………」 アキが何度もくれた“好き”を噛み締める んふふ、と思わずにやけてしまうがこれはアキには見せない俺だけの秘密 ぶらぶらとベッドに腰掛け脚を揺らす そういや何で俺人の家でこんな可愛くもない生足晒してるんだろう こんな格好、男がしても美味しくないだろうに しばらくベッドの上で考え事をしてみるも少し退屈で、俺は立ち上がって部屋の中を見て回ることにした 部屋はきちんと整理整頓されていて、とても広い 大きなベッドが目を引く部屋には台所もテーブルもソファもデスクも全て揃っている でも何より俺の興味を引くのはやはりキッチンだ ぺたりぺたりと裸足で脚を踏み入れたダイニング式のキッチンには、それなりに道具も一色揃っているようだ だがその道具を使ったような形跡はあまり無く、中には埃を被っている可哀想な道具たちもいる アキ、料理はしないって言ってたもんな……… まぁきっと、アキみたいな何でも卒無くこなせる奴は料理だってやればすぐに出来ちゃうんだろうけど なんて少し可笑しく思いながら俺は部屋の中をゆっくりと散策した

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