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動揺しません

「翔?」 「あ、お、おかえり………」 「ん、ただいま」 しばらく部屋を散策し、再びベッドに腰掛けようとしていると名前を呼ばれて振り返り立ち上がる そこには上半身裸姿でがしがしと乱暴に頭を拭っているアキの姿 はじめて見たアキの体は、貧相な俺と違ってがっちりと鍛え上げられており胸板が分厚かった 前に少しだけ見たことがあるが、改めて見ると腹筋も綺麗に割れていて俺とは大違いだ 思わず見惚れてしまっていることに気付き、恥ずかしくなった俺は勢いよく顔を下に向ける 「翔?どうかしたか?」 そう声を掛けられて顔を上げると、目の前にはまるで彫刻のように彫りの深い整った顔面 ち、近…………! 「な、なんでもない……!」 「ん?そうか?」 「い、いいから服着ろよ………!」 何だか裸でいられるのも小っ恥ずかしくてあたふたしながらアキにそう言う するとアキがにんまりといやらしく笑って、顔を覗き込んで来る 「いいだろー?別に、男同士なんだから」 「そ、そうだけど………っ」 「それに翔だって、下履いてないぜ?」 「おっ、俺のは………っ!」 顔を覗き込まれてますます恥ずかしくなった俺はぷいっとアキとは反対方向に体ごと向ける するとアキの太い腕が後ろから俺に巻きついて、うなじにキスをしながら少し意地悪にそう囁く 指摘されてもっと顔が熱くなるのを感じる いや、そもそも俺がこんな格好なのはアキのせいだ それに俺は下履いていないわけじゃない、ちゃんとパンツ履いてるもん 「な、翔、オレちゃんとシャワー浴びたよ」 「う………?」 「だからさ、オレの話聞いてくれる?」 「う、うん…………………」 大きなTシャツの裾をきゅっと引っ張り下を向いていると、アキはそう言って腕に力を込める 俺がこくりと頷くとアキはよかった、と穏やかに言って俺の体から腕を解く そして俺の手を引き、ベッドへと導く ここ、と言われベッドに向き合って座る 俺の正面で胡座をかくアキに釣られて俺も脚を組もうとするが、この格好ではそうもいかず仕方なく脚を隠すように体操座りをして小さく丸まる 「じゃあ、さっきの話の続きな」 「う、うん………」 これからアキが本当のことを話してくれる 正直怖いと思うこともあるけど、真剣な眼差しのアキを見たら聞かなきゃと、俺の意思が決まる 怖いことも 辛いことも 現実も 全て受け止めなきゃ そんな覚悟を持って正面のアキをじっと見つめた 「まずは、翔、ごめんっ!!」 「へっ!?」 だが俺の覚悟も虚しく、アキは急に勢いよく頭を下げてきた 何だかそれなりの覚悟を用意したつもりだったが空回りしてしまったようだ あまりにも予想外のアキの態度にどう返して良いか分からず目を泳がせる こんなにも潔く謝られるなんて思ってもいなくて、対応に困ってしまう 「オレ、翔のこと不安にさせちまった」 「い、いや、でも………俺が勝手に…」 「ううん、不安にさせたオレが悪ぃの」 たじろぐ俺をよそに、アキは顔を上げるとまっすぐ俺を見つめてそう言う 俺が否定しようともそれを受け入れることはなく、俺は真剣な瞳を向けられるばかり そ、そんな謝らなくたっていいのに………… 勝手に勘違いした俺も悪かったし、俺だってちゃんと謝ろうと思ってたんだけどな……… 「オレさ、翔を避けてたのには理由があって」 「う、うん…………」 来た 俺が聞きたかったこと 俺を避けた理由 きっと何か特別な理由があると踏んで、それなりの覚悟を用意していたんだ 辛いことを言われても受け入れる心の準備は万端だ だから今日の俺は、アキに何言われたって動揺しないぞ そう思っていたのに 「オレ昨日、翔を抱く夢見ちまったんだ」 アキの口から出てきた思いもよらぬ言葉 動揺なんてしないと言った数秒前の自分はどこへ行ったのやら、うまく頭を働かせられない俺は目を点にして口をぽかんとかっ開く だ、抱くっていうのは…………… 「その、抱くってこういう………?」 「あ、いや、そうじゃなくて………」 ハグをするようなジェスチャーをして見せると、アキは首を横に振った そして右手の人差し指と親指でマルを作り、もう片方の手の人差し指を立てそのマルへ突っ込む 「抱くってのは、こういうこと」 「へっ……………?」 「夢の中で翔とエッチしました、ってこと」 説明するように語ったアキの言葉に、俺は動揺した

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