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翔と健

「健!何してんだよ!」 「ぅ、うぇっ、ひっ…ひぅっ……し、しょぉ…」 「俺たちのこと探してくれたんだろ?ごめんな、入れ違いになっちゃったみたいで」 健に駆け寄ると、健はその場に小さくうずくまって涙の溜まった瞳を俺に向ける 慌てて跪き座り込む健の肩に手を置く 泣いているからか、呼吸が浅くピクピクとその小さな体が小刻みに動く 俺が素直に謝ると、健はぶんぶんと大きく首を横に振った 「ほら、教室戻ろ?」 「んっんっ………」 「あ……足挫いちゃったか?おんぶしようか?」 「んっんっ………!」 そう言って健に手を差し伸べるが健は俺の言葉全てに激しく首を横に振る そしてぐすぐすと顔を真っ赤にし唇を尖らせて俯く健 何だかぐずっている赤ちゃんみたいで可愛くて頭をふわふわと撫でてみると、健は俺に擦り寄って肩に顔を埋めてくる 「健?ほら、早く戻ろ?」 「…ひっく………ッ、……………ゃんが……っ」 「ん?」 「しずちゃん、がっ……しずちゃんがぁあ………」 するといよいよ健の瞳から大粒の涙が溢れ始め、ピンク色の丸い頬を伝って地面に落ちていく 涙声の健の口からは、何度も何度も“静ちゃん”という名前が溢れる 静ちゃん…………… それって………………… 「六条くんのこと?」 「んっ………んっんっ……………!」 そう尋ねると健はえずきながらコクコクと頷く ぽろぽろと流れる大粒の涙は俺の膝にぽたりと滴り、俺のズボンを湿らせていく 次の瞬間、健が俺の首にガバッと腕を巻きつけて抱きついた 「たっ、健っ!?」 「う、うっ、しずちゃ………っ、しずちゃんがぁ…っ」 「よ、よしよし………泣くな泣くな」 「あぅう……っ、だって、だって……ッ」 俺に抱きついた瞬間、健が大声をあげて泣き出した 俺の耳元で必死に言葉を紡ぐ健の背中を戸惑いながらもトントンと優しく一定のリズムで叩く よしよしと言いながら頭を撫でると、健は甘えるようにぐりぐりと頭を擦り付ける 「さっきっ……しずちゃんが……いて……っ」 「うんうん、辛かったな…………」 「おれねっ……しずちゃん、しんゆうなのにねっ、なんにも知らなくて…ッ」 「そっか…よしよし、もういいよ」 大きな涙を流し必死に声を紡ぐ健をぎゅっと抱きしめ、背中を優しく叩いて呼吸を落ち着かせる 俺自身こんなことはじめてでどう接するのが正しいのか分からないが、今はただ泣きじゃくる健の話を聞き慰めることで精一杯だった 健の話から察するに、 六条くんが保健室の窓から出て行った後、俺たちを探しに出た健と偶然にも遭遇したのだろう やっぱりテストの順位表を見たあの時、健が寂しそうにしていたのには理由があったみたいだ 「健、俺とアキもさっき六条くんに会ったんだ」 「ほんと………?」 「ん、ちゃんとアキとも話をするからさ、だからまずは教室に戻ろ?な?」 「………………ぅん……」 もう一度健を諭すように言うと、今度はゆっくり頷いて俺の首から腕をどかす そしてぐすぐすと鼻をすすりながら立ち上がると、俺のシャツの裾をぎゅっと握り俺の後ろを付いて来た 「足は痛くないか?おんぶしようか?」 「だいじょぶ…………ありがと…………っ」 「ん、ほら、顔拭きな?」 「んっ……………」 校舎裏の日影から抜け出し来た道を戻る ポケットから取り出したハンカチを健に渡すと、見事にずるずると鼻水をかまれた 教室に戻って途中から3限目の授業を受けた 授業の最中に扉を開けて教室に入って来た俺たちに顔を向けたアキは、すぐに何かを察したように頷きまた黒板に向き直した 健はお気に入りの海老名先生の授業にも関わらず、ずっと机に突っ伏していた 昼休みになるとアキも含めていつものように集まり、机をくっ付けて弁当を取り出す 俺はアキ用の弁当と健用の大きなおにぎりを取り出しいつものように差し出す 「ほら、今日は健の好きなツナだぞ?」 「ん………ありがとぉ……………」 「健、元気出せって!な!」 「アキも内心落ち込んでるくせにな」 「あは、バレた?」 察しの良いアキは、特に詳しい説明をせずともある程度理解してくれていた そして俺と一緒になって、明らかに落ち込んでいる健を励ますようにふざけてみせる それでも健は下を俯いたまま、赤くなった目を時折ごしごしと擦りながらおにぎりを小さく口に含んでいる 俺はアキと顔を見合わせ、タイミング見る見計ってさっき保健室で起こった出来事と六条くんに関する話をした 保健室で偶然遭遇したこと 彼が毎週水曜日だけ、保健室に来ていたこと 育児とアルバイト漬けの生活を送っていることは、後から網走先生に聞いた話だ 俺たちが知っている限りの話を、健にした すると健はまた瞳にたくさんの涙を溜め始めた そしてツナの入ったおにぎりを大きく口に含み、涙をぽろぽろと流しながら必死に声を絞り出す 「しずちゃん………っ、そんなに近くに、いたんだ…っ」 「健………」 「おれっ…………静ちゃんの力に、なりたいな……っ」 ごしごしとパーカーの袖で涙を拭いながら、必死に言葉を紡ぐ健を見て 俺もアキも、健と一緒に六条くんの支えになろう 俺の場合は部外者だけど、それでもアキや健を側で支えようと 心からそう思った

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