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アキの優しさ
「翔、みさきさんに連絡入れときなよ」
「ん、分かってる」
時は過ぎ放課後
今俺はアキと近所の定食屋に来ていた
注文した料理が来るまでの間に、姉ちゃん宛のメールを送る
内容はもちろん、アキの家にお泊まりをする旨
この間は何も言わずにお泊まりをしたら着信履歴がとんでもないことになっていたからな
送信ボタンを押し、ふぅと一息つく
それとほぼ同時に料理が運ばれて来て、少し早めの晩ご飯にする
「翔って意外と………」
「な、なんだよ……」
「いや、結構食うんだなと思ってさ」
「わ、悪いのかよ…………」
俺が注文した生姜焼き定食を見てアキがそう言う
ちなみにごはんは大盛りだ
睨みを利かせる俺にアキは違う違う、と手を振りながら否定しもっと少食なのかと思った、とそう言って笑う
確かにこの体格のせいか昔から少食に見られがちだが、実は意外とたくさん食べるタイプだ
外食に出るとごはんはいつも大盛りだし
「そう言うアキもよく食うじゃん」
「オレはそれっぽい見た目してるだろ?」
「まぁ、否定はしないけど…」
「いただきまーす」
にっこりと笑って自分を指差すアキの前にはチキンカツ定食にプラスで野菜炒めのトッピング
昼間に弁当を作っているから何となく察しているが、アキは大食いな上に早食いだ
そんなアキに少し遅れて手を合わせ、早めの夕食をとる
こんな風に一緒に外食をするのもはじめてだから少し新鮮で、心なしか胸が躍る
「アキ、ピーマン食べないの?」
「あー……………」
「……………苦手なんだ?」
食事を始めてしばらく経った頃、アキの皿に野菜炒めに入っているピーマンだけが取り残されていることに気付いた
どうやらピーマンが苦手な様子のアキは、俺の問いかけにゆっくりと頷いて照れたように笑う
そしてちまちまとピーマンをひとつひとつ端に避けていく
「アキって意外と子供っぽいものが嫌いなんだな」
「いやー、どうしても昔から好きになれないんだよな」
「好き嫌いとかなさそうなのに、ちょっと意外」
「そうか?結構あるぜ?」
そう言って指を折りながらナス、納豆、うめぼし、などと常に子供の苦手ランキング上位にいそうなメンバーを並べていく
アキの皿の端に避けられたピーマンの集団を箸で掴んで一気に口に放り込む
それを見たアキがわー、と小さく手を叩いて喜ぶ
アキって好き嫌い多かったのか…………
きっとクラスの誰も知らないアキの意外な一面だ
そんなアキの新しい顔を見られて、実はちょっと嬉しかったりする
緩む頬を誤魔化すようにむしゃむしゃと残りのピーマンを口に入れ咀嚼すると、アキは目を輝かせて喜んだ
お互いに食事が終わると一緒に手を合わせて席を立つ
「あ、オレが払うから翔は先出てて」
「いや、でも…………」
「いーの、オレにさせて、な?」
「う…………ありがと……………」
レジの前で財布を出そうとするとそれを止められる
そして言われるがままアキにご馳走になってしまい、少し悪い気もしてしまう
だがアキのこういった優しい一面に、俺は新たな疑問を持った
「よし、帰ろっ」
「…………ねぇアキ」
「ん?」
「お前さ、六条くんのこと金銭的に助けようとしたこと、ある?」
アキの優しさを感じて気付いた
もしかしたらアキは前に六条くん家族を金銭的に助けようとしたことがあるんじゃないかと
アキの性格なら大いにやりそうだと思い、思い切って尋ねてみるとアキはギクっとしたようによそ見をする
「やっぱり……………」
「だって…………」
「そういうところだよ、きっと」
「なっ、何が!?」
どうやら図星だったようだ
アキの人に対して優しい性格ならやりかねないと思った
だけどこういう優しさが、六条くんがアキに頼れなくなってしまった一因だと感じた
言葉を濁すように言い勝手に先を歩き出す俺を、アキが慌てて追いかける
俺はアキの優しいところが好きだから、それを否定しようとは思わなかった
アキの自宅マンションにたどり着き、エレベーターで10階まで上がる
ここに来るのは今日で2回目
もちろん今日は、アキに抱かれるために来た
「ん、んっ…………ぅ、ンんっ……」
「翔っ………ん……」
部屋の扉を開け中に入り、扉が閉まると同時にどちらからともなくキスをする
お互いの体をぎゅっと抱きしめ、そして激しく舌を絡ませる
いつもなら俺からキスなんてしないけど、今日はアキを慰めて甘やかす日だから特別だ
「アキ……シャワーしてから…………っ」
「ん、分かってるから、もうちょっとだけ」
「んんっ………ぅ、ン……ッ、んっ」
アキにシャワーを急かすと、もう少しだけと甘えるように俺を抱きしめて今度は一方的なキスをされる
唇をこじ開け舌をちゅっと吸われると、もうその気になってしまいそうな自分がいる
だけど今日は俺、アキを甘やかすって決めたんだ
だから
「……お風呂、一緒に入る………………?」
キスするアキを止め、そう尋ねた
正直死ぬほど恥ずかしかったけど、今日は傷心のアキのためにたくさんサービスするんだ
そう決めていたから意外にもスムーズに言えた気がする
「ん、入る」
「ほら、準備しよ?」
「ん、翔好き」
「ぎゃっ!?」
アキが俺の首筋にぐりぐりと頭を擦り付けてくる
どうやらさっきの王子様モードから一変、今度はまた甘えん坊モードのようだ
そんなアキの頭をよしよしと撫でると、急にお姫様抱っこをされ担がれる
そしてあの日のように脱衣所にすとんと下ろされるが、今日はあの日と違ってアキも一緒だ
「何かドキドキするな」
「う…………」
「翔から誘っておいて恥ずかしがるんだ?」
「し、仕方ないじゃん……っ」
自分の提案なはずなのに、アキに改めて指摘されると途端に顔が熱くなってくる
そんな顔を手で隠していると、アキが俺のシャツのボタンをぷちぷちと外す
そのままアキにされるがまま素っ裸にされた俺は、もじもじしながらアキと共に浴室へと足を踏み入れた
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