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恋人だから当たり前
「翔の肌本当すべすべ」
「ちょっ……何か触り方やらしいんだけど…」
「これからもっとやらしい事するからいいだろ?」
「うぅ………そう、だけど…………」
俺から誘ったはずなのに、今俺はアキに流されるがまま体を触られている
ゴツゴツした手に馴染ませたボディソープを、俺の体にするすると這わせていく
同じシャンプーの香りに、同じボディソープの香り
身に纏う全ての匂いがアキと同じで少しドキドキする
広い浴室は男2人で足を踏み入れても狭さを感じず、むしろ本当に2人だけの空間のようで妙な気分になる
「お尻、ここで少し解す?」
「んんっ………逆上せるから、あとでいい……」
「ん、分かった」
低いプラスチック製の椅子に座る俺の目の前で膝を付いて立つアキの手がするするとお尻の方に伸びてくる
アキの問いかけに首を振ると、その手はすぐにいなくなり再び俺の腰や胸に触れる
「少し浸かろっか」
「ん」
「よし、おいで」
「うっ………うん…………」
髪や体を洗っている間に湯船に溜めたお湯がいい感じになっている
ほかほかと湯気の出る湯船にアキが先に体を沈め、そして俺に向かって両手を広げて差し出す
少し戸惑いながらもアキの手を取って足を湯船に浸けると、アキがふんわりと微笑んで俺の手を引っ張った
「こ、これっ…ちょっと恥ずかしい………っ」
「ふふ、お風呂でもぎゅって出来るの嬉しいな!」
「うぅ………」
アキに導かれるまま湯船に浸かると、あっという間にアキの足の間に小さく収められる
すっぽりと収まる俺を後ろからぎゅっとバックハグすると、嬉しそうに笑った声がより近くに聞こえる
嬉しさを感じつつも恥ずかしく感じる俺は顔を半分お湯に沈めてぶくぶくと泡を生み出す
その泡をアキがきゃっきゃと笑って潰して遊ぶと、少し楽しくなって肩の力が抜ける
「翔、ありがとな……」
「な、なに急に……………」
「オレのこと、甘やかして癒してくれてるだろ?」
そう言ってもう一度ありがとな、と囁く
優しく落ち着きのある声は少し震えているような気がする
抱きしめられた俺は湯船から顔を出し、くるりと体の向きを変えてアキと向き合うように膝の上に座る
「………恋人なんだから、当たり前だ……」
濡れた髪をぐっと後ろにやったアキの珍しく露出したおでこに、ちゅっと優しいキスをする
戸惑いながらも心からの言葉をアキに贈ると、アキはきゅっと目を細めて微笑む
そんな優しく微笑むアキの頬にそっと手を添え、今度は唇に不器用なキスをかます
アキの心が傷付いているなら、それを癒すのは俺の役目だと思った
出来ることなら問題だって解決してあげたい
だけど俺に出来ることは少ないから、せめて
“恋人”として当たり前だと思うことを
「ああもう……オレ、自分がこんなに幸せで怖い…」
「い、言っただろ、支えるって………」
「ん、ありがとな、すげえ元気もらえる」
「んっ………」
アキが濡れた俺の髪をぐっとかき上げる
おそろいの髪型になったみたいだなと、微笑み今度は俺のおでこにキスをする
そんなアキの首に手を回すと、腰に触れたアキの手にぐっと力を込もる
そして抱き寄せるように、今度はどちらからともなく唇を重ねる
本当にまだ一度しか体を重ねたことがないのか、と疑いたくなるくらいにリラックスできているのはきっとアキのおかげだ
俺を怖がらせないように優しく優しく接してくれるアキのおかげ
だから俺も、そんな優しいアキを癒してあげたい
そんな思いを込めて、アキとキスをした
お風呂から上がり、この間と同じようにアキの大きなTシャツとボクサーパンツを借りる
前回と違いアキが普段使っている下着を借りると、股間の部分に謎の余裕があって少しイラつく
「ふふ、翔の肌あったかくてふわふわ」
「アキも同じだろ…」
「そうだけど違えの」
「なにそれ…………」
上半身裸のままソファに埋もれるアキに手を引かれ、濡れ髪のまま向き合って膝の上に乗せられる
跨がるようにしてたくましい膝の上に乗っかると、太ももをすりすりと撫でられる
アキの濡れた髪を首にかけられたタオルでぐしゃぐしゃと乱暴に拭う
「髪乾かすぞー」
「うわあっ……!」
「あはは、こら、暴れるなって!」
俺を膝に乗せたままアキがドライヤーを取り出し俺の髪を乾かし出す
突然吹き荒れる熱風に驚いて足をばたつかせると、アキの膝の上から落ちてしまいそうになり間一髪アキに捕まえられる
結局そのまま膝の上で髪を乾かされ、それと同時にアキの髪もタオルでぐしゃぐしゃと拭うとほぼ同じタイミングで髪が乾く
「んっ…………ん、んぅ……」
「ん…………翔、かわいい………」
「ん、んっ……………」
ドライヤーを置くと、そのまま腰に手を回されキスをされる
それを素直に受け取り口を開けると、ぬるんと舌をねじ込まれお互いに舌を絡める
「アキ………するならベッドいこ……………っ」
「ん、掴まっててな」
「んっ………」
唇を離しアキを見つめながら急かすように言うと、アキが俺を抱いたまま軽々と立ち上がりベッドに運ばれる
やっぱりアキは俺を抱っこすると少しだけお尻を揉むセクハラをしてくる
そんなアキに大人しく運ばれ、ベッドにゆっくり寝かせられる
「まだ少し緊張する?」
「ん………ちょっと………………」
「そっか、ゆっくり慣れていこうな」
「ん……」
今からアキとまたそういうことをする、と分かっていてこんなに触れ合っていてもやっぱり少し、いや本当はかなり緊張している
俺の気持ちを察してか、アキはまた優しい言葉をかけてくれる
そんな優しさで包み込んでくれるアキを、今日は俺が癒してあげられたらいいなと
そう思いながらアキに体を預けた
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