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イチャイチャ猫ちゃん
放課後
「ん、んん…………っ」
「んっ、翔、かわいい………っ」
「んぅ………っ、ん、んっ…………」
オレの家のソファに座り、どちらからともなく唇を重ね深く舌を絡め合う
オレのシャツをきゅっと控えめに掴んで夢中になってキスをする翔
翔とは今までに3回ほど体を重ねている
一番最近は一昨日のその前の日
お泊まりはしなかったが、オレの部屋で三度目のセックスをした
回数を重ねるごとに、翔は感じてくれるようになる
それに普段は見せない素直な所や甘えん坊な一面を見せてくれるのが堪らなく嬉しくて、今日も内心とても張り切っている
だがその翔が、今日は心に深い傷を負わされた
大きな原因は、オレだ
オレが翔とあまりにもいつも一緒にいるから、翔に飛び火した
“親衛隊”なんて元から欲しくなんか無かった
むしろこの“親衛隊”のせいでオレの今までの生活は不自由になったも同然
こんな男の何が良いのか、自分には全然分からない
そしてそんなやつらが、ついに直接翔を傷付けに来た
「ん、んっ…………」
「翔っ…………しょう………っ」
「んぅ…、ン、んんっ………」
実を言うと、あの時のことはよく覚えていない
あの時は翔に酷い言葉を浴びせ、実害まで及ぼそうとするような発言が耳に入った瞬間、気付いた時にはあの場に立っていた
それからはもう自分でもどうにもならないくらいに心が闇みたいな黒くて暗いものに包まれた
「アキ………今日、怒ってた…………?」
「ん?」
「あの時のアキ、ちょっと怖かった……」
「あー………………」
唇を離すと、真っ赤になった顔でオレを見上げながら翔が控えめに尋ねてくる
そして目を逸らしながら怖かったと告げると、下を向いて唇を噛み締める
翔の言う通りだ
オレはあの時、怒っていた
オレの大切な翔を傷付けて、自分らの勝手な都合でオレたちを引き裂こうとしたあいつらに、心底怒りを覚えていたんだ
「……ごめんな、何か我慢効かなくなっちまって」
「…………………ううん」
「翔に酷いこと言ってる奴ら見て、我慢出来なかった」
「………………俺は、嬉しかった…」
そう言って翔は真っ赤になった目を伏せほんのりと優しく微笑んだ
そんな翔がどうにも愛おしくて、ゆっくりと体を抱き寄せ抱きしめる
はじめて感じた
付き合っていることを周りに言えない苦悩
秘密にしていることはオレたち自身で作ったルールだし、これを変えるつもりも全くないが
“付き合ってるから当たり前です”が言えないもどかしさというものを、今日改めて思い知らされる
だからせめて、ふたりだけの場所では恋人でありたい
「ア、アキ………、シャワーは…っ?」
「んー?翔は早くオレに抱いて欲しくねえの?」
「………………………ほしい、けど…………」
「あは、今日はすげえ素直なのな」
「む…………」
居間の大きなソファでオレの隣に座る翔を引き寄せ膝の上に乗せる
素直にオレの膝に乗っかるでかい尻の男は、つんと唇を尖らせながらもオレの問いかけに遅れて頷く
そんなでかい尻をすりすりと撫でるも無抵抗
どうやら今日は、ナチュラルに尻を揉むセクハラをしても怒らない日のようだ
嫉妬深くて
甘えん坊で
それでいて気まぐれで
まるでばあちゃん家の猫みたいだ
「ほら、ごろごろ〜」
「んん…………もう、くしゅぐったい…」
「あはは、猫ちゃんみてえ、可愛い」
「な、何で猫ちゃんなんだよ………」
試しに翔の顎をごろごろとくすぐってみると、くすぐったいと言いながらも一瞬目を瞑って気持ちよさそうに蕩けた顔をする
そんな翔がやっぱり猫ちゃんみたいでからかうと、今度は恥ずかしがってオレの手をベチンと叩いてくる
ああ、これだ
オレが憧れた、恋人のイチャイチャ
本当は世界中の人にオレの恋人はこんなに可愛くて猫ちゃんみたいなのです、と声を大にして言いたいが
こんな秘密のイチャイチャも、オレは好きだ
そして翔も、何だかんだ言ってイチャイチャするのが好き
「ほら、ごろーん!」
「うわっ!」
「ふふ…………こちょこちょ攻撃だ!」
「あひっ、ははっ、ちょっ、やめろ……っ!」
翔をソファに押し倒して跨ると、今度は両脇腹をこちょこちょとくすぐる
翔は足をバタバタとさせながら涙目になってくすくすと笑う
手を止め首筋にちゅ、ちゅっと短いキスをいくつも落とすとまだ余韻が抜けないのかくすくすと小さく笑っている
翔との時間が、オレの一番好きな時間
そんなオレたちを引き離そうなんて、絶対にさせるもんかと心の中で誓う
そして、理不尽な攻撃をしてくるやつらから
必ず翔を、翔との時間を守ろうと誓った
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