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強引彼氏の独占欲
翔との初デート
やっとちゃんとしたデートに連れて来ることができて、オレは内心うきうきしている
だが翔には悟られぬよう、あくまでクールでスマートな男を装ってかっこつける
今日はまだ東京のことをよく知らない翔に東京を知ってもらうため、人通りの多いショッピング街へと連れ出した
「ここは?」
「ここはパンケーキ屋さんだな」
「じゃあこっちは?」
「こっちはメイド喫茶」
ゲームセンターを出た後、少し遅めの昼食を取るためにレストランへ向かっている最中
翔の好物だというオムライスの専門店を検索し、ヒットした中から翔が最も気に入った場所に向かってナビをしている所だ
大きな袋に恐竜を入れて持つ翔はオレの腕をちょこんと掴んで色々なものに興味津々の様子だ
気になるものがあると逐一尋ねてきて、まるで子供みたいで可愛らしい
「あ、猫カフェだ!」
「猫好きなの?」
「ん、俺猫派」
「オレも猫派だぜ!一緒だな!」
すると翔が猫カフェなるものを見つけ、そこに向かってとことこ駆けて行く
そして低い看板にかがんで視線を合わせ、猫派だと豪語する翔は瞳をキラキラと輝かせる
そんな翔の突き出されたお尻を、他の男が見ないようオレはしれっと翔の後ろに立ち壁になる
ったく、翔は危機感というものが足りないんだ
今日だって翔に熱烈な視線を送ってくる男がいたと言うのに、それにも気付かず無防備なポーズばかり
しかも本人は全く気付いていないし
それにそのぴっちりとしたスキニーパンツも、似合っている反面お尻の形が丸見えだし
「はぁ………」
「ん?どうかした?」
「な、何でもないよ!」
オレの苦労も知らずにマンチカンだなんだと嬉しそうに笑う翔を見て、思わずため息が出る
翔に尋ねられハッとしたオレは、聞こえてしまったため息を誤魔化し自分の中の汚い感情を無理矢理揉み消す
だめだだめだ、今日は翔とのデートなんだから
独占欲丸出しじゃかっこ悪いよな
ここはスマートに、オレがカバーしなきゃ
「アキ、オムライス…」
「猫カフェは?行かなくていいか?」
「………………また今度、連れてきて」
「!」
猫カフェに夢中になっていた翔がオレの腕にちょこんと触れてオムライスを催促して来る
そんな翔に猫カフェを提案すると、翔は少し恥じらった様子で“また今度”の約束を取り付けようとした
恥ずかしがり屋の翔が、また次も期待している
「おう!また今度、一緒に行こうな!」
「うん…」
そんな事実が嬉しくて、オレは思わず翔をぎゅっと抱きしめてしまいたくなる
それを間一髪理性で抑え、明るいテンションで頷いた
とりあえず猫カフェの前を過ぎて、またオムライスの専門店へ向かってナビを再開させる
スマホの地図によるとここからあと5分くらい歩けばすぐに着くとのことだ
「お、こっち側かな」
「……」
「翔、もうすぐ着くみたいだぜ」
「……」
普段はオレにくっ付くなと言ってくる翔
だけどそんな翔は今、オレにぴたりとくっ付いてどこか不機嫌そうな顔をしていた
オレが声をかけてみても翔は口をきつく結んでだんまりを決め込んでいる
どうしたんだろう、お腹空いて元気出ないかな…
そう思った時だった
「あ、あのぉ、お兄さんたち今暇ですかぁ?」
「え?」
「私たち今暇してて、よかったら一緒に遊びたいなって」
聞き覚えのない高い声が聞こえ、何気なく顔を上げるとそこには知らない女子が4人
皆それぞれおしゃれをし、きゃっきゃと騒いでオレたちを見上げる
ああ、これか……………
一見すれば可愛い女子
綺麗に巻かれた髪も細い脚も、白い肌だって世間一般的には可愛いと思う
だけどオレにとっちゃこんなもの、喜ばしいものでもなければ何とも思わない
だってオレには、翔が一番なのだから
オレは、オレの後ろに控えめに隠れようとする翔の腰にぐるっと腕を回した
驚いた様子の翔がひっと小さく声を漏らすが、今はそれに気を止める暇はない
オレは翔の細腰をぐっと抱き寄せ、わざと見せつけるかのように手を這わせた
「嬉しいけどごめんな、オレたち暇じゃないんだ」
「そ、そうなんですかあ…?」
「ん、今すげえいいとこだからさ」
「えっ、あっ、そ、そうなんですね〜…それじゃ〜」
そして翔の頬に頭にぴたりと頬をくっ付け、わざと目線を引きつけるようにしながら自身の首筋に触れる
オレの首を彩る翔特製の赤いキスマークに気付いた女子たちは、顔を赤くして早足で立ち去る
「やばっ、あれホモじゃないの……!?」
「細い方にもキスマ見えたんだけど…!」
「え、ガチ!?」
「やば、早く行こっ…!」
立ち去る女子たちの声が聞こえる
ヒソヒソ話をしているようでも、女子の声はいつも大きくてよく聞こえる
そんな声を聞きながら優越感に浸っていると、オレに抱かれた翔がぷるぷると震え出した
「バッ、バカアキ………っ!」
「んー?」
「いっ、今のわざとだろ………っっ!」
「あは、どうかな〜」
オレの腕の中からびゅんっと凄い勢いで抜け出した翔がオレを人通りの少ない路地裏に引っ張り込み、そして顔を真っ赤にして怒り出す
どうやら羞恥心でいっぱいな様子のオレの恋人は、瞳を潤ませて耳まで真っ赤に染めている
そんなオレを責め立てる翔相手にとぼけてみせると、またぷんすかと怒って喚く翔
だけどそんな翔だって、可愛くて仕方がない
「じゃああの子たちと一緒に遊びに行く?」
「う…………それは……ちがうけど…」
「オレがあの子たちの誘いに乗ったら翔怒るだろ?」
「う………だからって………」
怒る翔を、今度はオレが追い詰めるように顔を近付けてそう言い放つ
途端に劣勢に持ち込まれた翔は肩をすぼめて目を泳がせ解答に困っている様子
だって仕方ないだろ
オレの翔なんだから
大事なデートの最中なんだから
オレたちの邪魔なんて、絶対にさせるもんか
「オレは翔だけのものなんだろ?」
「…………………ぅ」
「翔も、オレだけのものだぜ?」
「んっ…」
そしてじりじりと追い詰めるように翔を壁に追いやると、人がいないのを確認してそのふんわりとした唇を奪う
拒絶しようとしない翔を見ると、これは完全にオレの圧勝だと確信する
「な?分かった?」
「わ、分かったから………っ、俺の負け……っ」
「んふふ、よし、じゃあ気を取り直して行くか!」
「うぅ………」
結局オレのキス攻撃で、勝負はオレの圧勝
折れた翔が顔を赤くして負けを認めた
そんな翔のおでこに仲直りのキスをすると、やっぱり翔は嫌がらなかった
そんな真っ赤な翔の手を引いて、オレはご機嫌で翔とのデートを再開させた
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