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デートの終わり

それからはアキと街中をぶらぶらして遊んだ 所々で休憩を挟みながら、時折一緒に写真を撮ったりして残りの時間をそれなりに有意義に使った 俺が疲れると、アキは俺の荷物を代わりに持ってくれた そして夕方5時前 少し早いが電車も混み始めるため、そろそろデートも終わりを迎える 「翔、オレ持とうか?」 「ううん、大丈夫」 「重かったら言ってな、オレ持つから」 「ん、ありがと」 アキと電車に乗って帰宅中 少し混み合っている電車の中で、アキはいつものように俺を壁側に立たせ守るように立つ 慣れない都会を半日歩き回ったこともあり、少し疲れが出てしまっている俺 そんな俺を気遣うように声を掛けてくれる 人生ではじめてのデート 何もかも、はじめてのことばかりだった 大きなゲームセンターで奮闘して プリクラなるものも撮って お互いのものを買い合った “割り勘”をしないアキのスタンスに合わせることは、何だかお互いの気持ちの距離が近くなったような気がして嬉しかった 「眠いよな、ここ、頭乗っけていいぞ」 「ん…………」 今日の疲れが睡魔となって襲ってくる ぱしぱしとゆっくり瞬きをしていると、俺が眠たいのを察したのかアキが優しく囁いてくれる せっかくなのでアキに甘えて、その丁度良い高さにある肩におでこをこつんとくっ付けた アキの柔軟剤の香りが俺を包む 少し汗の匂いがするのも、また人間らしくて逆に心地がいい そんなアキの香りと体温に癒されて、俺はゆっくりと目を瞑った それからしばらくしてアキに起こされると、いつの間にか場所は俺たちの最寄駅 閉まりそうになる扉から、アキとふたり慌てて飛び降りる 「少し寝たら目ぇ覚めた」 「お、よかった」 「アキ、買い物して帰ろ」 「買い物?何かいるの?」 アキとの帰り道 学校の時と同じように、最寄駅からゆっくりと並んで歩く俺たち アキの肩で少し寝たことにより、ぼやっとしていた頭が冴えてくる そのままアキに買い物を提案すると、隣のこの男は天然なのか首に傾げてそう尋ねて来た 何かいるの、って……………… こいつ、自分の家にインスタント食品と生米しかないの忘れたのか……… それに今日は、俺と一緒にご飯を作る約束のはず 「俺とおそろいのエプロンするんだろ?」 「!!」 「俺の手料理、食べなくていいの?」 「食べる!!」 天然なのかとぼけているのかよく分からないが、さっきのようにおそろいのエプロンでアキを誘惑した そして追い討ちを掛ける“手料理”の言葉 するとアキは背筋をぴんと伸ばし、元気よく手を上げ即答した 俺自身お弁当以外でアキに手料理を振る舞ったことはなかったので、緊張するのと同時に内心楽しみにもしている 「じゃ、買い出ししてから帰ろ」 「はいっ!!」 そう言って、俺たちは近くのスーパーに買い物をするために入った 買い物を終え、白いビニール袋に詰めた食材を持ってスーパーを出る 今日の夜の分と明日の朝の分、それから作り置きする分の食材を買ったためそれなりに重いビニール袋 「ほら、オレが持つから貸して」 「い、いいの、アキはそれ持ってるだろ」 「だったら翔も恐竜持ってんじゃん」 「だって………」 アキが俺の右手から食材の入ったビニール袋を奪おうとする だがアキも重たい荷物を持っているし、それに俺だって男だからと拒否したが、それでもアキは引かない 最近アキのこういう優しさに甘えすぎているからな もう少し自分でしなきゃ そう思っていた矢先、俺の隙を突いてアキが俺の手からビニール袋の持ち手を奪った だが、奪われたのは2つある持ち手のうちの1つだけ 「じゃあ半分こな!」 「あっ………」 「これなら文句ないだろ?」 「う……………うん………」 少しずつ火が沈むいつもの帰り道 重たかった袋はアキと半分こをすると、やっぱりそれなりに軽くなる 隣のアキを控えめに覗き見ると、丁度目が合ってにっこりと微笑み掛けてくる 「今日、楽しかったな」 「ん、楽しかった」 「次はさ、猫カフェ行こうぜ」 「連れてってくれんの?」 「当たり前だろ!約束な!」 今日の思い出を振り返ると同時に取り付けられた“次”の約束 本当は必ず次が来るように俺が仕組んでみた お互いに両手が塞がっていて指切りはできないが、その代わりに数秒間見つめ合って約束の合図 恥ずかしくなって目を逸らすと、アキは弾けるようににっこりと笑う ああ、俺の人生初のデート もう終わっちゃうのか、早いなぁ…………… なんて、次の約束を取り付けたばかりだと言うのに少し名残惜しく感じてしまう やはり“はじめて”は人間にとって特別なものなのだと実感する その“はじめて”を、またアキに捧げた ビニール袋を持った俺の右手の人差し指がアキの手にちょこんと触れてしまう 思わず驚いて指を引っ込めようとすると、アキの人差し指がきゅっと絡み付いてくる いつもなら繋げない手 いつも“男同士”の壁が邪魔をする だけど今だけ 今なら上手く言い訳が出来る気がするから だから今だけ 指一本でいい 贅沢は言わない 手のひら全部じゃなくていいから だから今だけ、堂々とアキと繋がらせて

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