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広崎マッサージ店

「ん…………っ」 目を覚ますとそこはさっきと違って柔らかい何かの上 ふわふわとする頭のままぱちりと瞬きをし、重たい体を起こす 「あ、起きたか?」 「あ、き…………ここ…………」 「ベッド、翔、お風呂で逆上せちゃったんだ」 「おふろ………………」 まだぼんやりとする頭で状況を理解しようとすると、隣で誰かに頬を撫でられた そっと優しく触れた手の主を目で追うと、そこには俺の恋人の姿 白いTシャツを着て、少し申し訳なさそうに眉を下げている あ………そっか…………… 俺、お風呂で逆上せて気絶して、それで…………… 「あ……服………………」 「ん、どう?新品の着心地は」 「すべすべ……気持ちいい…………」 「お、よかった」 ふと自身の体を見ると、白地に袖の部分だけダークグリーンの薄っぺらいTシャツ それに同じダークグリーンのショートパンツが履かされている 真新しい布地をするりと撫でてみると、何とも柔らかく着心地が良い まだぼんやりとする頭でアキを見つめると、アキは優しい笑顔で微笑んでくれる そして俺の頬をまた優しく撫でると、ベッドに乗り上げて俺に水の入ったペットボトルを渡す 「ほら、水飲んで」 「ん………」 「ごめんな、逆上せさせちゃって……」 「う、ううん……大丈夫……」 するとアキが、また少し眉をひそめて申し訳なさそうな顔をした 俺はゆっくりと首を横に振りペットボトルを受け取って口に水を少量含む 不意にアキの手がおでこに触れ、ぺりっと何かを剥がす その手を見るとそこには熱を覚ます為の冷却シート どうやら俺のおでこに、アキが貼っていてくれたようだった 「アキ……?」 「ん?」 「中に、出したやつは………?」 「ん、もう掻き出したよ、お腹痛くなったら嫌だろ?」 そこでふと思い出す 今日また、アキに中に出してと懇願したこと アキを煽るようなことを言って、中に出させたこと この身が覚えている、中出しの感覚 とにかく体が震えて意識が飛んで、頭がとろけておかしくなるほどに気持ちが良かった お腹があったかくて、このまま俺のものにしたかった “中に出されること”が“気持ちのいいこと”だと、完全に体が記憶した 「そっか……」 「起きたらお腹に無くて、少し残念?」 「ちっ…ちがっ………!そんなこと…………っ」 「んふふ、ごめんごめん、また今度シような」 無意識に俺の右手が下腹部を撫でる アキに言われたことが図星だったなんて言えなくて、俺はぶんぶんと首を横に振る 無邪気に笑ったアキは、そんなの気にもせずにっこり微笑んでまた“次”を約束する ああもう、俺エッチすると何だか馬鹿になっちゃう…… 恥ずかしいこと、いっぱい言った気がする…… 「お、マッサージしよっか」 「へ?」 「言ったろ?マッサージしてやるって」 「で、でも悪いよ、そんなの……」 急に恥ずかしくなってきてごろんとうつ伏せに寝転ぶと、丁度と言った具合にアキが俺の腰に触れてくる そして少し力を込めて、俺の腰からお尻にかけてをぐりぐりと刺激し始める 意外と気持ちが良くて、否定したもののもう少しして欲しいと思ってしまう 「翔を労るのも、オレの仕事だよ」 「じ、じゃあ…………」 「ふふ、広崎マッサージ店へようこそ!」 「んふっ、何それ」 結局アキにお世話になることになり、俺はもう一度ごろんとうつ伏せになってアキに背中を向けた するとアキがいい香りのするオイルを引き出しから取り出し、それをぬるぬると手に伸ばしていく 何だかまるで女物のオイルみたいで、また少しムッとしてしまうがその心配もすぐに消え去る 「これな、この間買っといたんだ!」 「………アキが買ったの?」 「ん!通販で買った!いい匂いだろ?」 「う、うん…………」 どうやらアキの彼女がこの部屋に置いていったもの、などでは無かったらしい それにそう言えば、この部屋に来たのは俺がはじめてだと言われていたことも思い出す アキに向けられた手のひらをくんくんと匂うと、やっぱり俺好みのいい香り 翔の好みの匂い覚えてるんだ、とアキが自慢げに言う 「触るぞー」 「ん………………ッ」 そして俺のTシャツをぺろりとめくり、オイルで温められた手のひらで俺の腰を改めてマッサージし始めた 「翔、イく時すっげえ腰反るから腰痛いだろ?」 「お、俺そんなに反ってる……?」 「ん、エロいくらい反ってる」 「エッ、エロ…………っ!?」 ぐりぐりと上に乗っかるようにしてアキの手で刺激を受ける腰 どうやら俺は相当腰が反っているらしく、そろそろ姿勢を矯正しないとなと改めて思う ズキズキと痛む腰に響くアキのマッサージ 意外と気持ちがよくて、アキはマッサージまで上手なのかと感心する 結局俺はアキの手ほどきに、じっと目を瞑って癒されることにした

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