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爽やかな朝とスパルタ料理教室

次の日の朝 「寝顔かっわいー…………」 「………ん……………ぐぅ」 「ふは、よだれ垂れてきた」 「ん゛………………っ」 いつもの癖で日曜だと言うのに結構早くに目が覚めてしまった 一度ぐーっと背伸びをし、隣ですやすやと眠る愛しい恋人に視線を移す その恋人はまだぷうぷうと寝息を立てており、たらりとよだれを垂らしている 柔らかいほっぺたをつんとつついてみると、むっと眉間にしわを寄せられる その眉間のしわをぐりぐりと指先で伸ばすようにすると、今度はぷいっとそっぽを向かれタオルケットを奪われてしまう 「起きるか………」 タオルケットを奪われてしまったオレは、体を起こして立ち上がりもう一度背伸びをした そしてタオルケットにまるっと包まる翔の頭らしき部分を撫で、トイレに向かった それからしばらくトイレに引きこもる オレのやることは、ひとつ 「っは………………ッ」 慣れた手つきで自身の勃起したものを上下に擦る どくどくと太い血管が脈を打ち、体がぶるっと芯から震える 朝勃ちの処理 こんなの日常茶飯事 だけど昨日も一昨日もセックスをして、そんでもって深夜にも翔に内緒で抜いたってのに オレの息子はどれだけ元気なんだろうか 「はぁ……………っ」 昨日の行為 昨日の感覚 昨日の匂いを思い出しながら自身を慰める いつもの清潔感のあるさっぱりとした顔が、快感で歪むのを思い出すだけでまた自身のものが跳ねる 翔との性交渉は、いつも1回だけ 受け身になってくれる翔を無理させない為 翔の体を壊してしまわない為 だけど本当は、全然足りない 「っ………………!」 右手を速めると、腹筋にぐっと力が入って自身のものの先端からびゅっと精液が噴き出す もう2日も連続でしていると言うのに、それでもオレのものは濃く濁っている 本当は、翔をもっと抱きたい 欲を言うならば、一晩中翔を愛して 翔の腹がパンパンに膨らむまで注いでどろどろのぐちゃぐちゃになるまで抱きたい だけどこんな格好悪くて欲深い自分なんて、翔に見せられるわけもない 「はぁ………オレ、かっこわる…………」 べっとりと右手を汚した精液を、トイレットペーパーで拭き取る こんな欲望まみれの自分が見苦しくて、思わずため息が出る そして萎えた自分のものを仕舞うと、さも何もなかったかのような顔で外へ出た 「アキ〜………………」 洗面所で手を洗っていると、まったりとした声がオレを呼んでいる その声は少し不満を含んでいるようで、そんな様子もまた愛しい 「はいはい、いるよ」 「う……………」 「ふふ、起きたらオレいなくて寂しかった?」 「そんなんじゃ、ない………」 オレは急いで翔の元へとことこと駆けて行くと、ベッドにぺたんと座り込んだ翔が案の定ご機嫌ななめな顔をして待っている そんな翔の隣に腰掛け柔らかい髪を優しく撫でてやると、翔は照れたようにそっぽを向く まだ昨日の甘えん坊モードが残っているのに、恥ずかしそうにする翔がまた可愛い こんな風にわがままを言ってくれるのも、オレにとっては最高の癒し 後でちゃんと目が覚めたらきっと、特訓だ!と言ってまた扱かれるのだろう それならば翔の目が覚める前に、この甘いひと時を堪能しよう 「コーヒー淹れよっか」 「ん……ミルクは………?」 「あるよ、カフェオレにする?」 「うん……………」 コーヒーを淹れるため、翔をベッドに残して立ち上がる そしてコーヒーメーカーのスイッチを入れ、2人分のコーヒーを淹れる 「お、起きた?おはよ」 「ん………おはよ…」 「あは、まだ眠いだろ」 「だって日曜だし………」 ふと横を見ると、いつの間にか立ち上がっていた翔がオレの隣にいた 翔はその細い体をぴたりとオレにくっ付け、細く流れるコーヒーをじっと見つめている まだ眠そうに目をとろんとさせる翔に一度すりすりと頬擦りをすると、丁度コーヒーが出来上がる そしておそろいのマグカップに出来立てのホットコーヒーを注ぎ、苦いものがあまり好きではない翔の分にはミルクを入れてカフェオレにした 欲求不満なオレの、爽やかな朝の始まりだ 「こらっ!また猫の手出来てない!」 「ひぃ」 「もう!また手切ったらどうすんの!?」 「ご、ごめんなさぁい……」 午前10時を回った頃 甘くて優雅で爽やかなコーヒータイムを過ごしたはずのオレは今、翔に叱られながら半泣き状態で玉ねぎに包丁を指している あのとろけて甘えん坊な翔はもういない 今はやんごとなきスパルタ料理教師だ 翔に指摘され、左手をぎゅっと猫の手にするよう試みる だがこれが意外にもなかなか難しく、指の関節が上手いごと丸まってくれない それに上手く猫の手が出来たと思えば、今度は右手がぷるぷると震える 元々不器用な方ではあった 裁縫なんかも不得意だし、絵を描くような細かい作業も得意ではなかった そして料理だけは、別格に苦手だった 元々は嫌いだったわけではない むしろ上手くなれたら便利だな、くらいには思っていたのだ だけどこの有様 どうやら料理に関しては本当にセンスが無いらしく、大食いのオレですら自身の手で生み出されたものを完食したことはない 逆に毎回吐いた だから今までずっと、料理をすることから避けていた 「ほら、こうすんの」 「………」 「こら!手を見ろ手を!!」 「はーい」 だけどこうやってみると、苦手な料理も楽しいもんだと思う自分がいる 隣でオレに見本を見せる翔の横顔をじっと見つめると、視線に気付いた翔が顔を赤くして怒る 本当は構って欲しくてわざと怒られるように見つめただけだが、それでも翔はオレの想像通りの反応をくれる 親に勝手に入れられた広い部屋 部屋だって家具だって何だって、もっと普通でよかった だけど翔がいるから、翔の香りがするからこんな部屋も好きになれる オレのセンスじゃない皿も、翔が作った料理が乗ると愛しく思える 「翔、味見は?」 「まだ!生肉食いたいのか!?」 「うぅ」 翔に手を叩かれ、またオレは苦手な包丁での作業に戻る 翔は隣でガミガミと怒りながらも、時折オレの様子を見てはちゃんとしたアドバイスをくれる そんなじっと翔を見つめると、翔はまた顔を赤くしてそっぽを向く

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