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惚気話

「あのな、実はオレ、翔に一目惚れしてさ」 「…………まぁ、お前のタイプだろ、あいつ」 「あはは、確かにそうなんだよ!」 「華奢で色白で、目がでかいやつ」 空を見上げながら語り出した輝 第一声に早くも賛同すると、無邪気な笑顔をこちらに向けられる 輝の口から出た“一目惚れ”の言葉 正直すごく意外だ あの輝が誰かに一目惚れだなんて 今まで自分から誰かを好きになったことなんてなかった男だ だが高村の容姿を思い出すと、その“一目惚れ”にもどこか納得してしまう 輝は昔から色が白くて細身で、目力の強い女がタイプだった 好きな女優もそう、輝が今まで適当に付き合ってきた相手もほとんどがそうだ ついでに気が強いと、尚良しと昔言っていた そう考えると、性別こそ男なものの高村は輝のタイプにドンピシャの相手と言えるだろう 「もちろん見た目だけが好きな訳じゃないぜ!」 「あぁ」 「そんでオレ、無意識にすっげえアプローチしてたの」 「はぁ」 それから輝は、まるでこの場に高村がいるかのように愛しい視線をどこかに向けて話を続けた 高村が転校してきた日のこと 俺がまだ学校に戻る前の、色々な出来事 どうやら気付かぬうちに、事あるごとに高村にアプローチを仕掛けていたらしい 俺と再会した日の気迫のある顔とは真逆の、まるでスライムのようにとろけた表情 こいつがどれだけ高村を好きか、この顔を見ただけだ分かる 「でもオレ、翔を傷付けるようなことしちまって」 「あ?何だ?傷付けることって」 「その……付き合うより前に無理矢理口こじ開けてキスしちまってさ…」 「何やってんだ」 今度は少し困ったような顔をして、次の話をする 今となってはこれもいい思い出だけど、なんて笑っているが、その瞳にはまだ少し引目を感じているような色も伺える 輝は昔から理性的な奴だった まぁ、女は山ほどいたが だがこいつ自身が理性に欠けた一面を見せることは無く、いつもどこか一歩引いていた 「まあそっから色々あって許して貰えてさ」 「そうか、よかったな」 「そんでオレ、朝駅で翔に好きって言ったんだ」 ころころ変わる、輝の表情 今度はその日を思い出すように懐かしい顔をすると、頬を赤く染めてにこにこ笑い出す 脚を組み直して手に持ったアイスバーを一口かじると、今度はもっと目を細めて笑う 「そしたら翔も泣きながら好きだバカ!って」 「はっ、そうか」 「もうオレほんっっっとに嬉しくて」 「そうか」 バタバタと足をばたつかせ、興奮したように体を震わせている そしてまるで高村の代わりと言うような甘ったるい表情を俺に向け、にんまりと笑う すごくない?と同意を求めてくるので適当に頷いておくと、適当に流そうとした俺に気付きなんだよ、と肩を小突いてくる 「そっからはな、毎日帰り道でチューして」 「は、はぁ」 「その後また一悶着あったけど、そっから更に翔と体で繋がることも出来てさ」 「……あぁ」 また不意に空を見上げると、その凛々しい顔をふっとどこか爽やかに微笑ませる そして幸せを噛み締めるような、口では表現し難い雰囲気を纏う 本当、張り付いたように笑うだけの俺が知る学校での姿とはまるで違う 笑顔の鉄仮面の輝は、もういないのだろう だがそこから、俺は油断した自身を呪うことになる 「それでさ、もう翔ってばすっげえの!」 「はぁ」 「もうとにかくエロくて可愛くてぇ……」 「は、はぁ……」 それから聞かされたのは、思わず口から砂糖を吐いちまいそうなほどに極甘な惚気話だった やれセックスがなんだ 処女だったのがなんだ 一緒に風呂に入るだなんだ 家では甘えん坊だなんだと まるで正気を奪われてやつれてしまいそうな程に、ゲロ甘い惚気話 そろそろ聞くに耐えなくて止めようとするも、興奮した輝の口は機関銃のように動いて止まることを知らない 「知ってるか?翔って細身なのに意外とグラマーで…」 「俺が知るかよ…………」 「ケツが重くてかわいーの」 「ったく………そろそろやめろよ…」 そう言って、体のラインを表現するように両手で空気に絵を描く輝 こいつ、学校では曲がりなりにも爽やか王子様キャラだったろうが……… 何で俺相手だとこうも遠慮がないんだ 俺は、そんな甘い話に耐性がある訳じゃねぇ だがそれからも、俺のストップなど耳にも届いていない輝のますます過激な惚気話は止まらなかった

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