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親友の信頼関係

「昨日もさ、翔とシたんだけど………」 「お、おい………」 「ん?」 「そういう話、他人にしていいのかよ」 静磨の偶然出会って、オレたちの馴れ初めや惚気話を聞かせている最中 手に持ったアイスバーが少しずつ減りながらも溶けて行き、地面に白い水たまりが出来ていることに気付く 慌ててそれにかぶり付きながら静磨に言われた言葉の意味を考える そりゃこんな下世話な話、そう簡単に他人にするもんじゃない それに男同士で付き合ってそういうことをしているだなんて、もし万が一それが外に漏れでもしたらもっとヤバい 「ま、そうかもな!」 「だったら……」 「でもオレ、話し相手が欲しかったんだ」 「…………輝……」 だけどオレは、相手が静磨だから話している 静磨は簡単に口を滑らせて噂話を周りに広めてしまうような男じゃないことは、このオレが一番よく知っている それにこれを話したからと言って、静磨が翔を奪おうとするなんてことも一切心配していない 誰かに聞いて欲しかったんだ 本当は死ぬほどでっかい声で、翔とのことを世界中の人間に知らしめたい 翔がオレのものだってことも、本当はみんなに言っちまいたい だけど出来ないから 「オレ、一度誰かと恋話ってやつしてみたかったんだ!」 「………」 「お前のこと、信頼してるからさ……」 「輝……………」 明るく振る舞い冗談っぽくそう言ってみる 隣で口を閉ざしたままの静磨は、眉をひそめて少し悲しそうな顔をする だけどどこか、照れ臭そうにも見えるその表情 翔との惚気話聞いてくれる奴なんて、そうそういないんだ 誰でもいいわけじゃないから だからお前を選んでお前に話しているのかもしれない それほどに、オレの静磨に対する信頼は厚いものだから 「お前にだから、話してるんだぜ」 まっすぐ静磨を見つめて、そう言った 何だかお互いの信頼を確かめるような話になってしまい少し照れ臭いが、これもまた一興 静磨と再び打ち解ける、一種の材料なんだ きっと頭の良い静磨だ オレがこう思って話していることも、恐らく汲み取ってくれるはず 「そうか…」 「ん!」 「………じゃあ好きなだけ、話せよ」 「……ふふ、ありがとな!静磨!」 少し照れ臭そうに頬を染める静磨は、ちらりとこちらに視線を向けながらそう言った オレ自身も少し恥ずかしくなってしまったが、それと同時に静磨がオレの意思を察してくれたことに気付き素直に礼を言う 親しき中にも礼儀ありと言う オレたちの間ではどんなに親しくても“ありがとう”を忘れない これは昔、オレたちが喧嘩してしまった時に静磨のお袋さんと親父さんが教えてくれたこと あの両親だから、静磨はここまで誠実で堅実で真っ直ぐな男に育ったんだと感じている 「でもオレ、お前の話も聞きたいな」 「あ?」 「静磨と健のな、れ、そ、めっ♡」 「なっ………!」 だけどオレのおしゃべりもここまでだ そろそろお前の話も聞いてみたいし、お前のことが知りたい オレがふざけるようにそう言うと、静磨は途端に顔を耳の先まで赤く染めて目を見開く そして唇を震わせながら、目を右往左往させ戸惑い始める くくっ………本当、ウブで面白いやつだ……… 「お、俺の話は別にいいだろうが…………」 「えー?でもオレだけ話して“不平等”じゃないか?」 「っ…………」 「な?少しでいいからさ!」 口ごもる静磨を追い詰めるように“不平等”の言葉にアクセントをつけて放った すると静磨は途端に怯み出す 普段から4人の兄弟たちに分け隔てなく接している静磨は“不平等”や“不公平”という言葉に弱い それがオレであっても、例外無し 「なっ?」 「………わ、分かったよ……少しだけだぞ…」 「よっしゃ!」 「はぁ…………」 勝負はオレの勝ち “不平等”の言葉に折れてしまった静磨は、はぁっと一度大きなため息を吐いて頷いた そして呆れたような表情を作るが、その裏ではきっと心臓が飛び出しそうな程にばくばくしているに違いない シャイでクールだが、実は分かりやすい男 髪と同じ色に染まった頬は少し引き攣り、鋭く尖った目つきは心なしか戸惑った色も見える 手からはぽたりと溶けたアイスが地面に向かって垂れる だけど一度そうだと言ってしまうと、自分の言葉は曲げない男 「………お前、これ健に言うなよ……」 「分かってるって!」 「ったく…………」 「ほら早く早く!」 釘を刺す静磨にこくこくと大きく頷いて見せると、また呆れたような表情でため息を吐く そんな静磨を急かすようにすると、今度は一度咳払いをした そして静磨は、健との馴れ初めをオレに話し始めた

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